大学進学を控えた夏の少女の期待と不安を描くスイートな青春小説『Roomies』

共著者:Sara Zarr と Tara Altebrando

ハードカバー: 288ページ

出版社: Little, Brown Books for Young Readers

ISBN-10: 0316217492

発売日: 2013/12/24(来週火曜日)

適正年齢:PG15(高校生向け)描写はほとんどないが、性的な話題あり

難易度:中級レベル(知らない表現が出てくるだろうが、ボキャブラリそのものは少ない)

ジャンル:YA(ヤングアダルト)/青春小説

キーワード:大学の寮のルームメイト/恋/家族関係/友情


 

カリフォルニア大学バークレー校への進学を控えた17歳のElizabeth(ニックネームはEB)は、最後の夏休みをアルバイトやインターンの仕事で忙しく費やしていた。高校時代の友人グループはみな故郷のニュージャージー州の大学に進学することが決まっており、アメリカの反対側に移るEBとの間には、すでに心理的な距離が広まりつつあった。EBの父親は幼いときに自分と母を捨ててサンフランシスコに移り、残された母は既婚者との恋愛と失恋を繰り返している。頼れる親が不在で兄弟や姉妹もないEBは、まだ会ったことのない大学寮でのルームメイトに過剰ともいえる期待や不安を抱いていた。

大学から通知をもらうやいなやルームメイト(roomie)に興奮気味のEメールを送ったEBだが、サンフランシスコでそれを受け取ったLaurenは、まったく別の心境にあった。


Laurenの両親には6人も子供がいるので、働いても働いても貧乏だ。長女のLaurenは、勉強だけでなく、アルバイトも、幼いきょうだいの世話もしなければならない。むろん自分だけの部屋などはなく、生活に疲れ果てていたLaurenは、大学の寮でひとりきりになるのを夢見ていた。一人部屋をリクエストしていたLaurenは、大学からのルームメイトのお知らせに落胆していたので、EBからの朗らかなメールに金持ちの気楽な学生を想像して、ぶっきらぼうな返事をする。

そんな返事を想像していなかったEBはショックを受け、傷つく。

Laurenは自分の過ちに気づいて関係を修復しようとし、互いに親しい者にさえ言わない秘密を打ち明け合う仲になるが、ふたたび誤解が生まれる。

 

大学進学は、アメリカのティーンにとって人生初めての大きな変化である。異性とのプラトニックな関係が変化してゆく時期でもあるが、大学進学での別れの時期でもある。親のほうも、子供の旅立ちで心が揺れ動く。変化への期待と不安が入り交じるのが、高校卒業から大学入学までの夏休みなのだ。

そして、新しい大学生活をともにするのが、見知らぬルームメイトである。

アメリカの多くの大学では、寮の部屋の大部分は2人部屋である。2年目からは友人同士でリクエストできるが、1年生のときは自己申告の生活パターンでマッチングをする。1年一緒に寝起きを共にしなければならないので、ルームメイトがどういう人なのかは新入生にとって、気になるところである。その不安と期待をうまく表したのがこの小説である。

ふたりの人気YA作家が共著したものなので、異なる二人の少女が携帯メッセージやEメールで誤解をしたり、腹を立てたり、がっかりしたり、喜んだりするところにリアリティがある。これは、大人でも容易に想像できる部分だ。良いところは、彼女たちが、自分のプライドをのみこんで、自分の過ちを認め、関係を修復しようとするところである。これができる彼女たちは、多くの大人よりもずっとオトナである。

実際には、私の娘のように最初のルームメイトの自己申告がめちゃくちゃで一方的に耐えるだけ、というケースは多い。だから、この本を読んでルームメイトを親友にする夢は抱かないほうがよいとは思うのだが、それでも、よくあるYA本よりも、ずっと現実的で、好感が抱ける。

「メールやメッセージで誤解はおこる」、「誤解が分かったらプライドを飲み込んで修復しよう」という部分を分かってもらうためにも、よい人間関係を作る努力を忘れないためにも、女子高校生たちに読ませておきたい本である(男の子にとっては、女子の心理が面倒に感じるかもしれない)。

 

 

 

 

 

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

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