表紙から想像できるとおりSFというよりYAロマンスの『These Broken Stars』

著者:Amie Kaufman & Meagan Spooner

ハードカバー: 384ページ

出版社: Hyperion Book

ISBN-10: 1423171020

発売日: 2013/12/10

適正年齢:PG12(中学生以上、細かい描写はないが性的行為を示唆する部分あり)

難易度:中級レベル(SF特有の科学的表現(造語あり)を無視すれば、後は1人称の平易な文章)

ジャンル:YAロマンス、SF

キーワード:宇宙旅行、惑星、遭難、身分違いの恋

本書をおすすめする読者:描写がマイルドな恋愛小説を読みたい人、簡単な洋書で英語に慣れたい人

本書をおすすめできない読者:本格的なSFやファンタジーが好きな人

 

「hyperspace」という技術を使って光より早く惑星間を旅する豪華宇宙船「Icarus」には、その技術を開発して世界で最も金持ちになった男の16歳の娘Lilac LaRouxが乗船していた。

Icarusには戦地に向かう兵士たちも乗船しており、上流階級は下層階級へのメディア対策として戦争の英雄Tarver Merendsenをパーティに招待していた。奨学金を受けた義務でパーティに顔を出していた18歳のTarverは、Lilacをみかけて心惹かれる。他の出席者は、父親のLaRouxから恐ろしい制裁を受けることを知っていたからLilacには手を出さないが、過去数年を戦地で過ごしたTarverは何も知らすに彼女に声をかける。


父親の制裁を恐れるLilacはTarverに冷たく接し、Tarverも彼女が誰なのかを後で知って後悔する。二度と会うことがない筈だったふたりだが、Icarusの遭難で見知らぬ惑星に不時着し、ふたりきりで残されてしまう。そして、サバイバルのために協力するうちに禁じられた恋に陥る。

 

ティーンと女性読者の間で爆発的に人気のYAジャンルのSFである。だが、表紙が示唆するように、SFよりもロマンスの要素が強い。

SFとしての要素は、1)Icarus遭難の理由 2)不時着した惑星の謎 3)LaRouxの作り出したカンパニーの陰謀、などがあり、興味深くなりそうなのに、いまひとつ深まらないのがSFファンとしては残念だった。

惑星部分はクラシックSFの(ネタバレなのでタイトルは白字)『惑星ソラリス』を連想させる。

ロマンスとして残念だったのは、Lilacのキャラクターである。過去の体験から父の制裁を恐れてTarverに冷たく接するという設定だが、1人称の思考回路にまったく共感できない。世間知らずの金持ちの少女として差し引いても、女性読者すら呆れる性格の悪さである(苦笑)。それに恋をする男性(読者も含めて)は、まずいないだろう。ここに無理がある。まあ、男性としては美人ならそれでいいのかもしれないけれど(笑)、著者たちが「芯の強い女性」としてこのように描いたとしたら問題だと思った。

Tarverは、女性読者が素直に好きになれるキャラクターだ。たくましく、力強く、誠実で、実は知性もあり、詩も書けるし、熱い心を持つ。

本格的なSFやファンタジーが好きな読者には物足りないが、異なる惑星での不思議な場所での、若いロマンチックな恋に胸を焦がしたい読者には最適。また、ロマンス的だが、性的な行為はキス以外は示唆だけなので、濃厚シーンが苦手だけれどロマンスが好きな読者にもおすすめ。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

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