人身売買のトピックを若者に考えてもらうための本『Breaking Free』

著者:Abby Sher

ペーパーバック: 160ページ

出版社: Barrons Juveniles

ISBN-10: 1438004532

発売日: 2014/06

適正年齢:PG12(中学生以上。性的話題あり)

難易度:中級レベル(高校で学ぶ英語で理解できる程度)

ジャンル:ルポ

キーワード:人身売買(human trafficing)、性虐待(sexual abuse)

 

自分ではまったく選択の余地がない子どものときに性虐待と人身売買の犠牲者になった3人の女性が、その絶望的な状況から抜けだし、ほかの犠牲者を援助するアドボケイトになった実話を紹介するルポ。レイプや売春などの話題を扱っているし、読むのが辛くなる内容だが、あえて中学生から高校生をターゲットにしている。「人身売買なんて自分には関係ない話」と思っている人や、「売春をしている女性は、好きでやっている」といった先入観を抱いている人は多いと思うが、そういった人々に「自分だったかもしれない」と思わせるきっかけになる内容である。


実話の後に「We are all part of the movement」という章があり、そこで、Who, What, Where, Why, When, How, Numbers, Nowという項目で人身売買の実情と自分にできることが付け加えられているのがいい。どのような文化や人々が犠牲者を産みだしているのかという情報は、若い女性だけでなく、男性も読んでおくべきだと思う。というのは、犠牲者の立場での情報を読むことにより、この本にも載っているような"Cool Men Don't Buy Sex"というキャンペーンに共感を抱けるようになる思うから。また、「加害者にはならない!」と決意する人が増えれば、犠牲者も減ると思うのだ。

この本でちょっと残念だったのは、3人の例のうち2人がアジア系で、1人がメキシコ系だったことだ(2つのケースはアメリカでのことだが)。アメリカ人の若者を対象にしているのであれば、もっと身近に感じてもらうためにも白人の犠牲者の例を出して欲しかった。ヨーロッパからの人身売買もあるのだから。

(私が読んだのは、BEAで著者にサインしていただいたARC版なので、発売されるバージョンは少々異なる可能性あり)

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