自費出版から人気ロマンス本作家になったColleen Hooverの新刊 Maybe Someday

著者:Colleen Hoover
ペーパーバック: 384ページ
出版社: Atria Books
ISBN-10: 1476753164
発売日: 2014/3/18
適正年齡:PG15+(性的コンテンツあり)
難易度:中級〜上級(特に難しい文章ではないが、日本の高校英語では分からない表現や単語はある)
ジャンル:ロマンス小説/ニューアダルト(NA)
キーワード:恋愛、三角関係、裏切り、友情、音楽、聴覚障害
賞:GoodreadsのBest Romance2014読者投票で2位

大学4年生のSydneyは、アパートの同居人である親友とボーイフレンドが自分を裏切っていたことを知り、住む場所と心の支えを同時に失ってしまう。

困っているときに救いの手を伸ばしたのは、向かいのアパートに住むRidgeだった。


Ridgeがバルコニーで奏でるギターのファンになっていたSydneyは、彼が聴覚障害者だと知って驚く。幼いときに聴力を失った彼は、健聴者の弟と一緒にギターを学んで振動で音を感じることができるようになっていたのだ。しかもRidgeは弟がリーダーになっているロックバンドの音楽も作っている。音楽好きのSydneyは、スランプに陥っているRidgeを助けてバンドのために歌詞を書くようになる。

曲を一緒に作るようになったRidgeとSydneyは互いに惹かれるものを感じるが、Ridgeには5年も付き合っているシリアスな恋人がいる。Sydneyは、自分を裏切った元親友のようにはなりたくないと思うけれど、Maybe Someday(もしかすると、いつか。。。)と願わずにはいられない。

 

Goodreadsで読者が選ぶ年間ベスト賞(Choice Award)のロマンス部門の最終候補に2作も入ったのが、Colleen Hooverである。読者が1冊しか投票できないことを考慮すると、どれほど多くのファンがいるかご想像できるだろう。

作家Hooverが生まれた逸話がいい。

ソーシャルワーカーだったHooverは、ただひたすら「書きたい!」という創作意欲にかられてSlammed という小説を書いた。2012年1月、その小説をキンドル本にして無料で配布したときには、そんなに多くの人に読んでもらえるとは思っていなかったという。それなのに、多くの人がダウンロードし、読者が情熱的なレビューを載せ始めたのである。一ヶ月後に刊行した続編Point of RetreatSlammedはファンの口コミで広まり、6月にはアマゾンの電子書籍のトップ100に入り、7月にはニューヨーク・タイムズ紙の電子書籍ベストセラーリストにも入ったのである。
この結果、Hooverは出版社のArita(Simon & Schuster)と契約できただけでなく、作品の映画権も売ることができたのである(ハフィントン・ポストの記事より)。

こういう逸話は、よく「シンデレラ・ストーリー」と呼ばれる。だが、シンデレラは魔法使いを待っていただけだけれど、Hooverは自から行動を起こしたのである。

「どうせだめだ」と言って何もしなければ、何も起こらない。「アマゾンなんかで無料で自費出版されている作品にはろくなものはない」という人はけっこういるが、Hooverのようなケースもあるのだ。
私は、「どうせだめ」と他人の努力を馬鹿にする人ではなく、「がんばれ」と応援する人でありたい。

ところで、なぜHooverの作品はこれほど人気があるのだろう?

二作読んでみてわかったのは、Hooverの作品がraw emotion(生々しい、むき出しの感情)で満ちているということである。
信じている者からの裏切り、恋している相手が他人を愛している苦しみ、など恋愛にまつわる葛藤で、ずっと心臓を掴まれっぱなしなのである。

ジャンル的にはYAとNA(それよりちょっと上の年代のニューアダルト)で、若者に人気の音楽や若者らしいやりとりもあって、それがこの年代にアピールするのだろう。また、思春期特有の恋愛感情を懐かしく思う大人の女性にも人気があるようだ。「リアルな生活では落ち着いた関係がいいけれど、空想の世界では胸が焦がれる恋愛をしたい」と願う人もけっこういると思う。

個人的には登場人物たちの言動にまったく共感できないので好みではないが、いったん読み始めたらどんどん読み進められるという点でお薦めできる。

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