ソーシャルメディアの時代だからこそ新鮮な古本屋を舞台にした青春小説 Words in Deep Blue

作者:Cath Crowley
ハードカバー: 288ページ
出版社: Knopf Books for Young Readers
ISBN-10: 1101937645
発売日: 2017/6/6
適正年齢:PG13+(性や死のテーマあり。中学生以上)
難易度:中級+(高校英語をマスターしていたら、努力と根気で読めるレベル)
ジャンル:YA(ヤングアダルト)/青春小説
キーワード:古本屋、書店、本好き、成長物語、死、愛、初恋、友情

Rachelは、海辺の町に引っ越した3年前まで、親友のHenryに恋をしていた。
けれども、Henryが恋したのは9年生のとき転校してきたAmyだった。Rachelは引っ越しの寸前に気持ちを打ち明ける手紙を書いたが、Amyと過ごすことを選んだHenryはそれには応えなかった。

海辺の町で新しい高校生活を始めてボーイフレンドも作ったRachelだが、弟のCalが海で溺死してうつ状態になった。それまでは海洋学者をめざす優等生だったのに、友人をなくし、ボーイフレンドと別れ、最終学年を落第してしまったRachelは、休学状態のままで昔の町に戻ることになった。

何度も自分を見捨てて新しいボーイフレンドを作るAmyだが、Henryは何度でも彼女を許す。Amyのことを本当に理解して愛しているのは自分だけだとHenryは信じている。
けれども、幼いときから一番の親友だったRachelのことは忘れていない。親友が理由も告げずに自分を切り捨てたことに傷ついたHenryは懐かしさと憤りが混じり合った感情を抱いていた。

戻ってきたRachelは、Henryの両親が経営する古本屋でアルバイトをすることになった。
最初は互いを避けていた2人だが、そのうちに昔の友情を少しずつ取り戻していく。けれども、RachelはCalが死んだことを打ち明けられず、友情が壊れた出来事についても話し合うことができない……。

Words in Deep Blueは、2017年刊行のYA(ヤングアダルト)小説としては、ノスタルジックな雰囲気がある。テキストメッセージやソーシャルメディアも少し登場するが、それはわずかでしかない。この小説で高校生たちが真摯な気持ちを取り交わすのは、古本屋にある「Letter Library」というシステムなのだ。

この古本屋には売り物ではない本のセクションがあり、そこにある本の持ち出しは禁止だが書店内で自由に読むことができる。自分の気に入った文章を囲ったり、感想をマージンに書き込んだり、手紙を挟み込んで、同じ本を好きな人とシェアする。それが、Henryの両親が始めたLetter Libraryのアイディアだ。

引っ越し前にRachelがHenryに告白した場所がLetter Libraryだった。
T.S. Eliotの詩集『Prufrock and Other Observations』の中で、Henryが最も好きな『The Love Song of J. Alfred Prufrock』のページに手紙を挟み、Henryの部屋にそのページを読むようメモを残したのだった。

このLetter Libraryを利用したのはRachelだけではなかった。
私立学校に馴染めず、孤立しているHenryの妹は、謎の少年と手紙をやり取りしているうちに恋心を抱くようになる。

けれども、今の時代に古本屋が繁盛するはずがない。そのあたりは小説ながら現実的だ。この古本屋も経営困難のために書店売却の話が持ち上がっていて、それが家族崩壊の危機をもたらしていた。

何十年も生きた現実主義者の私は、Henryの将来についての両親の態度やRachelのアドバイスに疑問を抱くのだが、それをこのYA小説の評価と結びつけるのは「お門違い」というものだろう。だから異論はのべないことにする。

この小説のすばらしさは、登場人物たちが読んだり手紙を挟み込む古典から現代小説まで多くの作品を駆使し、現実の愛や喪失を読者に考えさせるところにある。

ソーシャルメディアやネットサーフィンのために、私たちが見失ってしまったものを、このYA小説は思い出させてくれる。

だからこそ、2017年の「これを読まずして年は越せないで賞」に推薦したい。

 

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