アラブの魔神(Djinn)の種族戦争を描く新しいファンタジー三部作(The Daevabad Trilogy) 『The City Of Brass』

作者:S. A. Chakraborty(デビュー作家)
ハードカバー: 544ページ
出版社: Harper Voyager
ISBN-10: 0062678108
発売日: 2017/11/14
適正年齢:PG15
難易度:中級+〜上級
ジャンル:ファンタジー
キーワード:18世紀中東、イスラム教、Djinn、魔神、イスラム教の精霊、宗教戦争、カイロ、イスラマバード、オスマン帝国、魔法、ヒーラー、ロマンス

孤児のNahri(ナヒリ)は、危険と隣合わせの18世紀のカイロで、占いや民間医療をしながら生き延びてきた。だが、ある悪魔祓いが通常とは異なる展開になり、意図せずに古いDjinn(ジン/魔神)のダラ(Dara)を呼び出してしまった。

外からは人間にしか見えないナヒリだが、じつはジンの種族のひとつであるDaeva(ディーバ)の血が混じっているらしい。ナヒリの家系は、パワフルな治療の魔力で知られていたが、すべて敵によって殺害されていた。その生き残りであるナヒリは、政治的にも貴重な存在だ。

ダラは、ジンとディーバにとって重要な都市Daevabad(ディーババード)までナヒリを連れていく約束をするが、自分の過去やナヒリの家族については明かそうとしない。

ディーババードは、過去にDaevaと戦って勝利したDjinnが治めている。冷静かつ冷酷な国王は、政治的な理由からナヒリを長男の王子と結婚させようとする。

道楽を好む長男とは異なり、次男の王子Alizayd(アリザイード、アリ)は、周囲から「狂信的」とみなされるほど宗教的で、生真面目な人生を送っている。しかし、自分の母が異種族のジンであることや、宗教に熱心なあまり、虐げられた民族による反政府団体を支援した秘密を抱えている。

最初は王の命令で嫌々ながらナヒリと友だちになろうとしたアリだが、互いを知るうちに、本当の友情を育てていく。しかし、ナヒリが恋心を抱くダラの血みどろの過去が明らかになり、事態は急速に崩壊に向かう……。

最近のファンタジーは、舞台が欧州から中東、ロシアに移ってきている。
出版社がそういう作品を探しているところもあるし、読者もエキゾチックな新鮮さを感じるようだ。

それらの中でも、このデビュー作の世界観はなかなかのものだ。
人間の世界からは見えないジンの大都市ディーババード(イスラマバードを連想させる)に住む6つのジンの種族と彼らの戦いの歴史、そして、現在の政治的な緊張感など、実際の中東の歴史を連想させるところがある。

主人公の若い女性ナヒリは、詐欺師として生きてきたストリートスマートだけあって、「イスラム教徒の女性」のステレオタイプにはあてはまらない。ロマンス的な要素もあるが、あまりそこは大きな部分ではないのもいい。そして、若者を読者ターゲットにしたファンタジーにありがちな典型的な三角関係でもない。

三部作の最初の巻なのでクリフハンガーで終わるが、続きが待ち遠しい作品であることはまちがいない。

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