結婚は個人的なものであり、かつ社会的なものである An American Marriage

作者:Tayari Jones
ハードカバー: 308ページ
出版社: Algonquin Books
ISBN-10: 1616208775
発売日: 2018/2/6
適正年齢:PG15+(性的な話題あり)
難易度:上級(ネイティブの普通レベルだが、入り込みやすく、理解しやすい文章)
ジャンル:現代文学
キーワード:アメリカ、アフリカン・アメリカン、黒人、人種差別、冤罪、結婚、家族問題、性の格差、ラブストーリー
オプラ・ウィンフリーの「Oprah’s Book Club」推薦書

結婚1周年を迎えたRoyとCelestialは、高学歴で中流階級の新世代黒人カップルの代表的存在だ。

野心家のRoyは若きエグゼクティブとしてさらにリッチな将来を夢見ており、人形アーティストのCelestialもブレイクアウトしようとしている。親の世代とは異なり、人種を超えた裕福なアメリカン・ライフをまさに手にしようとしていた。

だが、多くの夫婦がそうであるように、彼らは悩みがない完璧なカップルではなかった。
Royには浮気性があるようだし、アーティストとしてのCelestialの仕事を趣味のように見下げるところがある。しかも、裕福な家庭出身で自立心が強いCelestialと、古い男女の役割を信じる労働者階級のRoyの両親の仲はぎくしゃくしている。

Celestialにとって苦痛でしかないRoyの実家訪問を終えた夜、二人が泊まっていたホテルでRoyが逮捕された。レイプの被害者がRoyを誤認し、犯人だと訴えたのだ。CelestialもRoyも彼が無実だと知っているが、弁護士の無能さでRoyは有罪判決を受け、12年の懲役刑を言い渡されてしまう。

引き離された二人は手紙で愛と忠誠を誓うが、二人が一緒に過ごした時間よりも、離ればなれの時間のほうが長くなり、心も離れていく。

Celestialは、孤独と戦いながらもひとりでアーティストとしてのキャリアを築いていくが、それに対してRoyの両親は快く思わない。また、無実の罪で懲役しているRoyは、自由に羽ばたいているかのように見える妻に嫉妬や怒りをぶつける。

Celestialの叔父の尽力で有罪判決が覆され、5年後にRoyは出所することになった。しかし、ふたりの愛は、この5年間に変貌していた……。

オプラ・ウィンフリーの「Oprah’s Book Club」に選ばれ、全米でベストセラーになっているこの小説は、黒人だというだけで有罪判決を受け、しかも長期の懲役刑を受けやすいアメリカ独自の人種差別問題を浮き彫りにしている。また、黒人男性ゆえに無実の罪で投獄されたRoyへの「黒人としての義務」として、自分の娘の幸福や選択の自由よりも婿の権利を優先するCelestialの父親の態度も印象深い。

だが、アメリカの人種差別問題だけを扱っているわけではない。「結婚」というシステムが男女の間だけでなく、家族たちにもたらす普遍的な問題の数々を取り扱っている。ゆえに、多くの読者の共感を呼ぶのであろう。

アメリカではグループ全員が同じ本を読んで語り合う「book club」という読書クラブがあるが、それにぴったりだと思った。

どのあたりに共感し、どのあたりに反感を覚えたのか、自分ならどうするのか、語り合うときっと面白い作品である。

Leave a Reply