作者:Taylor Jenkins Reid
ペーパーバック: 400ページ
出版社: Atria Books
ISBN-10: 1501161938
発売日: 2017/6/13
適正年齢:R
難易度:中級+〜上級(ページ数が多く、慣れない読者は状況の把握がしにくいかもしれない。だが、文章そのものはシンプルで、フレーズも短いので理解しやすい)
ジャンル:女性小説/歴史小説/ラブストーリー
キーワード/テーマ:ハリウッド、女優、LGBTQ、恋
エヴリン・ヒューゴは、現役時代には7回も結婚したことで知られるグラマラスな女優だった。しかし引退後はスポットライトを離れ、メディアの取材を拒否して謎めいた生活を送っていた。だが、79歳になった現在、ある条件で雑誌社からの取材を受け入れた。
エヴリンの条件とは、若手の女性記者モニーク・グラントの取材だけを受けるというものだった。指名を受けてエヴリンの家を訪れたモニークは、取材が仮の理由だということを知らされる。エヴリンは自分の伝記をモニークに書かせたいというのだ。
エヴリンがモニークに語った過去は、メディアが伝えたイメージとはまったく異なるものだった。エヴリンが愛した対象も。その真実にモニークは引き込まれていく。遠慮がちだったモニークが仕事で成功するために背中を押してくれたエヴリンだが、最後に知らされたある「真実」が二人の関係を変える……。
「恋多き女優」あるいは「何度も結婚した女優」という点、エヴリン・ヒューゴはマリリン・モンローやエリザベス・テイラーを連想させる。ポジションを得るためにセックスを使うというのは現在のハリウッドでも消えていないのだろうが、過去はもっとひどかったのだろうと想像させるような内容だ。
だが、この小説の面白さはそんな現実との類似点ではなく、メディアで知るイメージとは異なる、女優の真実の姿だ。エヴリンは7人の夫と結婚したが、愛した人はその中には含まれていない。それなら、なぜ7回も結婚したのか? その謎が次々と明らかになっていくところにはミステリの要素がある。
作者のTylor Jenkins Reidは興味深い作家だ。これまでの昨日すべてが、いわゆる「女性小説」に属するのだが、典型的な女性小説ではない。大衆小説として楽しめるのだが、どこかに深い問いかけやひねりがあり、余韻を残す。
次の作品では何に挑戦するのか楽しみだ。
表題通り、グラマラスなアカデミー女優Evelynが7人の男性と結婚するも、幾度か意思疎通の齟齬を挟みながら実際に30年間愛し続けたのは、清楚なアカデミー女優Celia St. Jamesという二重生活が、伝記の口述筆記の形で語られます。
幾つかの結婚では、「結婚」に突き進む男性が、映画というフィクション世界の美女に夢中になってしまい、現実の生身の彼女が見えなくなってしまう過程が、Rita Hayworthの有名な”Men go to bed with Gilda, but wake up with me.”に表現されます。或いは、Celiaとの愛を隠す為、ある意味幸せな偽装結婚もありました。
それぞれの結婚生活は、文章の途中にゴシップ記事の切れ端が挿入され、外面的且つ表層的な解釈が示される一方、Evelynの置かれた実際の状況が口述筆記される体裁なので、暴露記事を淡々と読むような展開です。最後の土壇場に予想外の展開が用意されていますが、最終的に美しく纏まり感心しました。
Blancasさん、
そうですね。ゴシップ記事的なところがありますが、最後にしっかりと終えているところがこの作者の「さすが!」というところだと思いました。