アメリカを代表するカラフルなゼリー菓子Jell-Oで裕福になった家族の悲劇 Jell-O Girls

作者:Allie Rowbottom
ハードカバー: 288ページ
出版社: Little, Brown and Company
ISBN-10: 9780316510615
ASIN: 0316510610
発売日: 2018/7/24
適正年齢:PG15
難易度:上級(ノンフィクションだが文章は文学的)
ジャンル:回想記/ノンフィクション
テーマ/キーワード:Jell-O、アメリカの食文化の歴史、アメリカのオールドマネー、機能不全家族、アルコール依存症、呪い

赤や緑のカラフルな「Jell-O」は、アメリカ人なら知らない人がいないほど有名なゼリー菓子だ。術後の病院食に必ずといっていいほど出てくるし、中華料理店のデザートにもある。

また、自然な食品よりも加工食品のほうが「高級」だというアイディアが広まった第二次世界大戦後には、残り物の野菜やスナックをJell-Oに閉じ込めた「ジェロ・サラダ」という奇妙な食品が流行した。この当時に若き主婦だった私の姑は、いまだにこの類のジェロ・サラダを作って私たちを脅かしている。

動物のコラーゲンを使ったゼラチンのデザートは中世期のイギリスにも存在したのだが、手間がかかるので、料理人を雇える貴族や富豪の食べ物だった。一般人が簡単に調理できる商業用ゼラチン粉末を作って広めたのがJell-Oだった。

残念なことに、苦労して商業用の粉ゼラチンを開発した人は、売る才能には恵まれておらず、1899年に450ドルで会社を売った。インフレ計算サイトによると、現在の1万4千ドル弱(約150万円)なので、叩き売りに等しい。

たったの450ドルで買い、26年後に6700万ドルで会社を売却したのが、この回想録の作者であるAllie Rowbottomの祖先だ。

6700万ドルは現在でも相当な金額だが、1925年当時の6700万ドルは現在だと1000億円以上の価値がある。それだけの富があれば、いろいろな事業に手を出すことができるので、さらに富を増やすことができる。その富は、子孫にも引き継がれていった。

しかし、仕事に就く必要もないほど裕福な家庭に生まれるのは、他人が想像するほど羨ましいことではないようだ。

著者のRowbottomの母Maryは、子供の頃から恋心を抱いていた従兄のJohnから「Jell-Oの呪い」のことを知らされた。Jell-Oで富を得たこの家族の男たちは若いうちに命を失うのだという。その呪いの元凶は「金」だとJohnは言った。

だが、Maryは、呪いを受けるのは一家の男だけではなく、女もだと信じた。Maryは子供の頃から性的な虐待を受け、14歳のときに母をがんで失い、自分を誘惑する従兄のJohnと初体験をした後に無視をされ、精神的に不安定になる。摂食障害になり、19歳で精神病院に入院しているころに仲が良かった従姉のジョアンが自殺し、親友が交通事故で死んだ。Johnも彼が予言したように若くして命を失った。

Maryは、金だけでなく、黙って抑え込んでいることが「呪い」なのだと信じ、呪いを断つために回想録を書こうとした。しかし、夫の浮気やがんとの闘病で苦しんだMaryは回想録を出版せずに亡くなった。

Maryの娘である作者のAllie Rowbottomも母のように摂食障害などで苦しんだ。だが、母が書き溜めていた回想録をもとに、ついに回想録を書き上げた。

明るい色のジェリー菓子であるJell-Oのイメージとは裏腹に、この回想録は徹底的に暗い。また、「金持ちの白人の自己憐憫など読みたくない」といった読者の意見もある。だが、作者の文章力はなかなかのもので、悲惨な家族の記録が文芸小説のように感じる。

作者の実力が評価されるのは、次の作品だろう。

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