作者:Kate Quinn
Publisher : William Morrow
刊行日:March 9, 2021
Language : English
ハードカバー : 656 pages
ISBN-10 : 006305941X
ISBN-13 : 978-0063059412
対象年齢:成人(セックスシーン描写レベル:1)
読みやすさ:7
ジャンル:歴史小説
キーワード、テーマ:英国、第二次世界大戦、暗号解読、Bletchly Park(ブレッチリー・パーク)、エディンバラ公爵フィリップ王配、Osla Benning、スパイ、Cambridge Five、裏切り、友情
英国バッキンガムシャーにあるBletchly Park(ブレッチリー・パーク)は、第二次世界大戦中に政府暗号学校 (GC&CS)が設置され、エニグマなどドイツの暗号解読が行われたことで有名だ。かのアラン・チューリングが勤務したことでも知られ、多くの小説や映画の舞台になっている。
初期にはケンブリッジやオックスフォード大学卒業の数学やチェスの才能がある男子学生が暗号解読に、「デビュタント」と呼ばれる上流階級の若い女性が事務職に雇われていたようだが、そのうちに数学や工学の学位を持つ中産階級の女性が暗号解読の重要な人材としてリクルートされるようになった。21世紀の現在でも男女の雇用は平等ではないが、多くの男性が兵士として従軍していた第二次世界大戦中には、Bletchly Parkの雇用者の3/4が女性だったという。
最近「第二次世界大戦小説の女王」というニックネームで呼ばれるKate Quinnの最新作The The Rose Codeは、このBletchly Parkを舞台に暗号解読に加わった3人の女性の体験を描いている。そのうち一人は、エディンバラ公爵フィリップ王配がエリザベス女王と結婚する前につきあっていたガールフレンドのOsla Benningをモデルにしている。フィリップの叔父であるマウントバッテン伯爵は、Oslaのゴッドファーザーでもある。マウントバッテン伯爵の家に滞在していたときに友人の紹介でフィリップと知り合い、周囲も「フィリップの最初のガールフレンド」と認めていた。その後どうなったのかは、この小説のように推測によるフィクションそのものだと思うが、興味深いことは確かだ。
Oslaは汽車でBletchly Parkに向かう途中に労働者階級出身のMabと出会いすぐさま仲良くなる。そして、下宿先の娘のBethに才能があることを見出し、Bletchly Parkにリクルートしてもらう。背景も性格も異なる3人は親友になるが、ある時から憎み合う敵同士になった。
戦争終結から3年後、Oslaは精神病院に監禁されているBethから暗号の手紙を受け取った。BPで一緒に働いていた者の中にロシアのスパイがいて、その裏切り者のために彼女は精神病院に閉じ込められているというのだ。BethにもMabにも関わりたくないOslaだが、この手紙に危機感を覚えてMabに連絡を取った。MabはOslaとBethへの憎しみを顕にするが、忠誠と秘密厳守を誓った同士として精神病院を一緒に訪問することを約束した……。
3人の女性の恋愛の部分はメロドラマの要素が強い。けれども、暗号解読に関わる者たちの日常生活や協力関係などは興味深い。ページ数が多いので圧倒されるかもしれないが、3人の友情が壊れた理由やBethが精神病院に閉じ込められている理由など、謎に惹かれて読み続けるうちに本の分厚さを忘れることができるだろう。
ドラマチックな展開とハリウッド的なエンディングは、700ページ近い長編を読み切った読者へのご褒美といえるだろう。
有難うございます。Amazon audible で、たっぷり拝聴致しました。流石に長かったですが。いつも楽しみにしております。
アメリカ人の義母も「長すぎた〜」と言っていました😁