作者:Justina Ireland
Publisher : Balzer + Bray
発売日:May 18, 2021
Hardcover : 336 pages
ISBN-10 : 0062915894
ISBN-13 : 978-0062915894
対象年齢 : 小学校高学年から中学生
読みやすさ:6
ジャンル:歴史ファンタジー、ホラー、ミステリ
キーワード、テーマ:アメリカ南部、民間信仰、人種差別、ジャズエイジ、幽霊、悲恋
2021年 これを読まずして年は越せないで賞候補作
アメリカ南部に人種差別を肯定する「ジム・クロウ法」があった1922年、ジョージア州に住む12歳のOphelia (Ophie) は人種差別者の白人たちによって父を殺され、家を焼かれた。同じ夜、Ophieは自分に幽霊と対話する能力があることを知った。
家を失ったOphieと母は、人種差別が南部ほど強くない北部のピッツバーグ(ペンシルバニア州)にある親戚の家に住むことになった。高齢の叔母は2人を歓迎したが、残りの家族が敵意を抱いているのは明らかだった。自分たちだけの住処に移る資金を得るためにOphieは母と一緒に裕福な白人家族の屋敷Daffodil Manorで働くことになった。
Ophieの仕事は屋敷の主の母Mrs. Caruthersの世話をすることだ。気難しいだけでなく人種差別者であることを誇りにしているような老女の世話役は長続きしないことで知られていた。辛いときに助けてくれたのは、Claraという幽霊だった。「幽霊は利用することしか考えられない存在だから信用してはならない」と聞かされてきたのだが、Ophieに優しくしてくれるのはClaraだけだ。Claraと関わるようになってから、Ophieは彼女の死の真相をつきとめたいと思うようになった…。
人種差別の理不尽さを扱っているけれども、読者である子供に説教するような小説ではない。最初のページから引き込まれるページ・ターナーの娯楽小説だ。南部のアフリカ系アメリカ人に伝わる民間信仰(この場合は幽霊)を扱ったホラーだがとても怖い内容ではなく、どちらかというとミステリであり、胸にじ〜んとくる悲恋物語だ。
アメリカで工業が栄えてきた1920年代は、禁酒法時代でもあり、ジャズエイジでもあった。大恐慌が起こる前のピッツバーグの雰囲気も感じられる歴史小説としても読めるなかなかのスグレモノ児童書。