他人と異なるために孤立している子供たちに「親切さ」で繋がる価値観を伝える児童書 Flight of the Puffin

作者: Ann Braden
Publisher ‏ : ‎ Nancy Paulsen Books
刊行日:May 4, 2021
Hardcover ‏ : ‎ 240 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 1984816063
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1984816061
適正年齢:小学校高学年から中学生
読みやすさ:5
ジャンル:児童書
キーワード、テーマ:学校、親子関係、孤立、親切さ
2021年これ読ま候補

Libbyの家族は「自分が欲しいものがあったら相手をやりこめて手に入れる」ことを奨励している。周囲の人々は「代々のいじめっ子一家」とみなしているが、Libbyは両親や兄のようにはなりたくないと思っている。けれども、学校では誤解されて孤立しているし、家では別の理由で罰を与えられる。

Libbyから遠く離れた場所に住むVincentは、アポロ11号の軌道計算に関わった数学者のキャサリン・ジョンソンを尊敬している数学好きの少年だが、他人に合わせようとしないために学校で執拗ないじめにあっている。

Vincentは近所でホームレスのTに出会う。男の子か女の子かわからないので直接尋ねたら「どちらだとも感じない」と言う。どうやらそれが原因で家を出たらしい。VincentはTと仲良くなっていく。

そこからさらに遠く離れた地方に住むJackは、資金がない地元の学校を救うために教育委員会の会合に出かけるが、そこでの自分の発言が「ジェンダーフリーのトイレ設立への反対」ととらえられてしまい、新聞記事になる。父親を含む保守的な地元の人たちはJackの勇気を称えるが、見知らぬ者たちからは「偏見がある差別者」と糾弾される。

Libbyがひとつのカードに書いたメッセージをきっかけに、これら4人の見知らぬ子供たちがつながり、「自分らしく生きる」勇気を得ていく……。

アメリカで子育てをしているとき、多くの人から「中学校が最も難しい時期」と聞かされた。もう小学生ではないが、高校生でもない。子供から大人に移行する中間地点で成長の個人差も激しい。この時期に多くのいじめが起こるのだということも聞いた。

この小説は、その難しい年頃の子供たちが「自分らしく生きる」ことで葛藤しているのを描いている。また、登場人物のJackのように実際にはとても心優しい人物がちょっとした発言を取り上げられてソーシャルメディアで徹底的に叩かれる現実も描いている。それらの問題に対する解決策が「親切」であることも。

孤立している子供を応援する心優しい児童書である。

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