Publisher : Faber & Faber
刊行日:2021年10月
Hardcover : 128 pages
ISBN-10 : 0802158749
ISBN-13 : 978-0802158741
対象年齢:一般(PG12+、妊娠、虐待のテーマはあるが描写はない)
読みやすさ:7
ジャンル:文芸小説、中編
テーマ:小さな社会での見えない圧力、人間の本質、宗教、道徳、善
賞:ブッカー賞ショートリスト(最終発表はまだ)
クリスマスが近づく1985年。カトリックの教会がすべてをコントロールしているアイルランドの小さな町で炭の商人をしているBill Furlongは、休む暇どころか食べる暇もないほど忙しい。婚外子として生まれたBillは、結婚して子宝に恵まれ、小さいながらも商売をしている現在の自分の幸運さを知っている。
ある朝、女子修道院に炭を配達したBillは、そこで思いがけぬ状況に遭遇した。Billだが、その状況が頭から離れない。この町では教会を敵にまわすと暮らしが辛くなることがわかっているから誰も教会には背かない。Billは自分の生い立ちを振り返り、人としての自分の行動を考える…。
2022年ブッカー賞ショートリストに残ったこの作品は、キリスト教徒にとって特別な意味を持つ「クリスマス」にからめて、宗教の偽善、宗教を隠れ蓑にして自分の偽善から目をそらす人間の性、本当に勇敢であるということはどういうことなのかを静かに語っている。21世紀の現在に刊行された作品とは思えない古典の雰囲気が漂っていて、じわじわと胸にこたえてくる。短編に近い短い小説だが、ずっしりとした存在感があり、読後に長く余韻が残る。