
作者:Jonathan Haidt
Publisher : Penguin Press
刊行日:March 26, 2024
Hardcover : 400 pages
ISBN-10 : 0593655036
ISBN-13 : 978-0593655030
対象年齢:一般(PG12)
読みやすさレベル:6
ジャンル;ノンフィクション、社会心理学
テーマ、キーワード:スマートフォン、ソーシャルメディア、思春期の心理問題、社会問題
これまでにもノンフィクションのAmerican Girlsなど、ソーシャルメディアが現代の子どもたちの心理に大きな影響を与えていることを警告する本をご紹介してきた。
American Girlsが刊行されたのは2016年2月なので、約9年前ということになる。2010年代初期から思春期の子どもの精神的健康が悪化していることが疑われていたが、当時はまだソーシャルメディアが新しかったためにデータが不足していた。
社会心理学者でニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネス教授のJonathan Haidtは、著作The Anxious Generationでデータを使ってうつ病や自傷行為、自殺が倍増していることと、それがソーシャルメディアの普及と関連していることを説明している。
「遊び」を中心とした子ども時代が消失しはじめたのは1980年ごろからだが、2010年初頭にスマートフォンが普及してきたとたん、遊びどころかスマホ中心の子ども時代になってしまった。その結果、睡眠不足、注意散漫、孤独感、他人との社会的な比較など子どもの社会的な発達や心理的な発達を妨げる要因が生まれた。ソーシャルメディアはことに女子に大きな影響を与えているが、男子は現実から引きこもり、仮想世界に没頭する傾向があり、それが精神に悪影響を与えている。
読んでいくうちに「これはヤバイ」という危機感が強まってくる本だ。
Haidtは「遊びを中心とした子ども時代」の重要性を強調し、それを取り戻すために親、教師、企業、政府が協力することを提案している。
これから子育てをする世代だけでなく、その上の世代も読むべき警告の書であるが、実際に企業や政府が協力することはありえないだろう。ゆえに、それぞれの親がわが子に「遊び中心の子ども時代」を提供してやるしかないと思うのだ。「遊び」の重要性については、洋書ファンクラブの初期にDavid ElkindのPower of Playでご紹介したこともあるのだが、私自身の子ども時代を振り返っても遊びによる学びは大きい。
娘夫婦たちはThe Anxious Generationを読んではいないのだが、スマホによって社会が変わるのを実体験したミレニアル世代なので危機感は覚えていたようだ。そのせいか、自分たちの娘(現在2歳)が生まれた時から、祖父母の私たちも協力してデジタルは極力使わない子育てをしている。親も祖父母も、相当天気が悪くない限りは孫を外に連れて行って遊ぶし、本人も外で冒険をしたがる。絵を描くときにはiPadではなく、本物の絵の具やクレヨンを使う。ビートルズが好きな彼女は、自分専用のターンテーブルで古いレコードを聴いている。そして、リンゴやポールと一緒に歌っている。
自分の手で土や植物に触れ、走り回る遊びが、これからの時代は「英才教育」になっていくのかもしれない。

