Category: 文芸小説(商業的作品を含む)
図書館司書ジェンが選んだ「今年出版されたおすすめ本5冊」
私の元義理の妹で図書館司書をしているジェンは、昔から本の虫。図書館のために本を選ぶ役割もつとめていますから、本が出版される前から多くの本をすでに読める立場にいます。とくに、文芸小説のなかでも、商業的にも成功するものを選ぶのが得意です。 というわけで、ちょっと前にジェンに尋ねた「今年出版されたおすすめの本」を5冊後紹介します。 1. Reliable Wife 2. Little Bee 3. Cutting for Stone 4. Shanghai Girls…
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2009年ピューリッツアー賞受賞作-Olive Kitteridge
Elizabeth Strout 2008年3月発売 文芸小説/短編集 米国北東部メイン州の沿岸の小さな町Crosbyを舞台に、数学教師Olive Kitteridgeを軸に繋がる13の短編集。 大柄のOliveは、町の住民たちから気性が激しく、寛容がなく、頑固で批判的だと思われている。町の小さな薬局を経営する薬剤師の夫Henryは温厚な人物として誰からも親しまれているが、夫の善人ぶりはかえってOliveを苛立たせるだけだ。最初の短編「Pharmacy」では、中年にさしかかったOliveとHenryが別の異性に惹かれる微妙な心理を描いており、読者はHenryに同情心を覚えずにはいられないだろう。だが、OliveとHenry以外のCrosbyの住人を主人公とする短編で脇役として登場するOliveからは異なる人物像が浮かんでくる。現実世界では人とはそういう複雑なものである。読み進むうちに彼女の毅然とした批判精神に対して反感と同時に尊敬も抱くようになり、老齢に達した孤独なOliveのほのかな恋を描いた最後の短編「River」では、(たぶんOliveのひとり息子が感じているように)彼女の欠陥をすべて受け入れたうえで幸運を祈らずにはいられないだろう。 鬱、自殺、親子関係、不倫関係、老化といったテーマを扱った短編はそれぞれが独立したストーリーで、Stroutの卓越した語りに吹き出したり涙ぐんだりしながら、いつのまにか、これまで会った人々を思い出し、自らの人生を振り返っていた。熟練した文芸作品でありながら気取ったところがなく、深い人間理解に基づく優れた短編集である。 ●ここが魅力! 有名な賞の受賞作は疑ってかかる癖があるのですが、久々に心底「これは受賞に値する!」と同感した作品です。3日間連続で睡眠時間5時間以下の寝不足だったにも関わらず深夜まで読みふけってしまいました。 最初にこの本でOliveに出会ったとき、あまりにも好感が抱けなくて「え~、これが主人公!」とがっかりしましたが、読み進めるうちにしだいに彼女に興味を抱くようになりました。Oliveだけでなく、わずかな希望や愛を求める普通の人々の悲喜劇に同情し、最後にはOliveに友達として電話をかけてあげたくなりました。 こういうことを感じさせてくれる文芸作品がPulitzer Prize(ピューリッツアー賞)を受賞したことを嬉しく思います。 ●読みやすさ ★★☆☆☆ 文章そのものは簡潔で難解ではありません。…
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hauntingという形容詞がぴったりくるThe House of Riverton
Kate Morton 2008年4月(米国) 歴史小説/文芸小説 若き詩人R.S. Hunter の悲劇的な自殺を描く映画の製作者が、現場にいた者のなかで唯一の生存者である98歳のGraceに接触してくる。それをきっかけにGraceは忘れたかったRiverton Houseのことを思い出す。 第一世界大戦前の1914年の英国。母子家庭で育った14歳のGraceは、母が以前奉公していたRiverton Houseで住み込みのメイドになる。上流階級の者は使用人を人間として考慮しないのでGraceは透明人間のように家族の多くの秘密を目撃するようになる。無口な母との孤独な生活に慣れていたGraceが強く惹かれたのは、館の主Lord Ashburyを訪問していた孫のDavid, Hannah, Emmelineと彼らの秘密の遊び「The Game」だった。Hannahと同い年のGraceは、使用人の立場は超えないもののHannahの秘密の守り人として特別な親密さを与えてもらう。 Davidの高校の友人Robbie…
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ゲイ中年男性のあがきと社会風刺が可笑しい-Alternatives to Sex
muse & marketplace特集第8回でご紹介するのは、ボランティア講師のStephen McCauleyです。 アメリカでは、文芸評論家も重視するのが人物造型(Character development)です。人物描写ではなく、それ以前に登場人物そのものをまるで生きている人のようにちゃんと作り上げることがCharacter developmentで、それを描写するのはまた別のテクということになります。人物造型と人物描写のどちらにも卓越していて、それだけでも本1冊楽しめるのが、Stephen McCauleyの作品です。ジェニファー・アニストン主演の映画The Object of My Affection(邦題「私の愛の対象」)をご存知の方はいらっしゃると思いますが、その原作を書いたのがMcCauleyです。ゲイの男性と同居している妊娠中の女性が、親友だった彼に恋してしまうという切なくて可笑しいこのコメディはアメリカではベストセラーになった作品です。てっきり邦訳されていると思い込んでいたら、「ところが私の作品は日本語には訳されていないのよ。手伝ってくれなくっちゃ!」とチャーミングにせがまれて、びっくり。McCauleyの作品は日本人が楽しめそうなものばかりなので、邦訳されていないのは、本当に不思議です。 Alternatives to Sex…
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素朴なイタリア人たちの切なくてほろ苦いラブストーリー-A Kiss from Maddalena
Christopher Catellani2003年4月文芸小説/歴史(第二次世界大戦中のイタリア) muse & marketplace特集第4回でご紹介するのは、主催の非営利団体Grub Streetの長年のスタッフ兼教師で、この企画の顔であるChristopher Catellaniです。(詳しくはCatellaniのサイトをどうぞ)。 昨年のmuse & marketplaceで人前であまり話さないことで知られるジョナサン・フランゼンがキーノート講演をしてくれたのはCatellaniのおかげなのです(その話はこちらを)。今年も総合的なディレクターとして忙しく飛び回っていました。私とは過去10年間に2、3度会った程度の知り合いなのに、初日に顔を見かけると満面の笑みで「よく来てくれましたね!ハグさせて」と歓迎してくれるところがさすが対人関係の天才だと思いました。Catellaniのチャーミングであたたかな性格は彼の作品にも反映しています。 本作品を「翻訳権がまだ売れていないすばらしい本」のリストに加えました(5/1/09)。 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=B001KZHGEW&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS1=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0752864130&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 (あらすじ)舞台は第二次世界大戦中のイタリアの小さな農村Santa Cecilia。17歳のVitoの父親は彼の姉2人だけを連れてアメリカに移住してしまい、最近は仕送りも途絶えている。痴呆が進む母親の面倒を看る思いやりある青年だが、同年齢の青年に比べると身体の成長も遅く振舞いも子供っぽい。徴兵で村にはほとんど適齢期の青年がいなくなってしまったのに、少女たちは道化者のVitoのことを恋愛対象とはみなしていない。村人たちも彼を「いい奴だけれど役立たず」と軽くみなしている。そのVitoが恋したのは、村で最も美しい少女Maddalenaだった。努力を重ねて奇跡のようにMaddalenaの愛を勝ち取ったものの、イタリアが連合軍に寝返り、敵となったドイツ軍の撤退のルートにあるSanta…
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Case Histories
作者:Kate Atkinson 2004年初刊 ジャンル:ミステリー/文芸小説 Whitbread賞受賞作「Behind the Scenes at the Museum」の作者Atkinsonの第4作「Case Histories」は、一応ミステリーということになっているが、純文学として読むべきだろう。 離婚した元警官のJackson Brodieは、私立探偵として3つのcold case(迷宮入り事件)の調査に取り組む。中年の2人の姉妹から依頼されたのは、家族のみなから愛されていた末っ子のOliviaが3歳のときに行方不明になった事件だった。2つめのケースは10年前に起こった弁護士の娘の殺人事件で、3つめは斧で夫を殺した妻の妹からの依頼で、姪を探してほしいというものだ。 これらのケースにJacksonは自分の過去を重ね、気がすすまないながらに調査をしてゆく。家族内の秘密、崩壊した家族、過去から抜け出せない人々、など人間の悲しい性をAtkinsonは独自の不思議なユーモアに満ちた口調で語ってゆく。…

