時をかける彼と戻りを待つ彼女の時を超えて続くラブストーリー The Time Traveler’s Wife

Audrey Niffenegger
Mariner Books
2004年5月発売
560 pages
SF/商業的文芸小説/ラブストーリー

図書館司書のHenryは、”Chrono Displacement”症候群という架空の疾患に侵されていているために、予期しないときに予期しない時間と場所に突然タイムトラベルをしてしまう。飛んでゆく時は、未来の場合もあり、過去の場合もあり、予測はできないが、たいていは彼にとって重要な意味を持つ時である。
問題は、タイムトラベルの際に肉体以外は移動できないこと。だから別の時間に出現するHenryは全裸で、きわどいトラブルに巻き込まれる。何度も危機に瀕した彼は問題を解決するために一定のスキルを身につけるようになった。
また、タイムトラベルがHenryにもたらしたのは、ラブストーリーのパラドックスである。
Henryは28歳のときに初めて20歳のClareに出会うが、Clareは彼のことをずっと知っていると言う。実はClareは6歳のときに40代のHenryに出会い、彼が28歳になるまでに何度も会っていたのだ。

図書館での出会いから時間は過去と未来に飛びつつ進行する。現在、過去、未来のHenryとClareの視点を交えるうちに、しだいに過去と未来のタイムトラベルが重なり合ってくる。
現在にとどまってClareと普通の幸福をつかみたいHenryのフラストレーションと、いつ消えていつ戻ってくるのかわからない夫を待つClareの不安を、SFというよりもは、純文学のようにリリカルに、切なく、情熱的に描いている。
HenryとClareの性格をまるごと愛せない読者や、タイムトラベルのパラドックス(特にお金儲けの手段)が気になる人はいると思うが、時を越える運命的なラブストーリーにはつい涙せずにはいられないだろう。
コンセプトはSFだが、内容は純粋にラブストーリーである。

●ここが魅力!
なんといっても、クレバーな設定とストーリー展開です。
Clareにとっては6歳のときに出会った40歳のHenryが初対面で、Henryにとっては28歳のときに出会った20歳のClareが初対面。ClareにはHenryの未来との思い出があるけれども、結婚後にHenryが体験してゆくのはClareとの過去です。ClareとHenryがいろいろな年齢の組み合わせで会う場面を想像すると眩暈がしそうですが、同時に感動的でもあります。
「これはSFじゃないぞー」と頭の隅で文句を言いながらも、ついどっぷりはまってしまい、不覚にも涙した巧みなラブストーリーです。

●読みやすさ ★★★☆☆
560ページとけっこう厚いし、語り手がHenryとClareで入れ替わりますし、時間も飛びますし、決して読みやすいとはいえません。でも、文法は簡単ですし、難解な表現もありません。ラブストーリーなのでかえって児童書よりも読みやすく感じる方がいらっしゃると思います。Amazon.comの「Look Inside」でいくつかページを読んでみて、読めそうかどうか試すことをおすすめします。

●アダルト度 ★★★★☆
さほど生々しい表現はありませんが、ラブシーンはけっこうあります。
高校生で読んでる子はけっこういるようです。

●この本を気に入った方にはこんな本も…
映画化されたタイムトラベルロマンス

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追記:アメリカでは2009年8月14日に映画公開になります。
トレイラーは映画の公式サイトでどうぞ。

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