普通の少女ベラとバンパイアの少年エドワードのロマンスに全米の少女が憧れた「Twilight」シリーズの作者Stephenie Meyerによる初めてのSF – The Host

Stephenie Meyer
2008年6月初刊
ジャンル:SF/スリラー/パラノーマル/ロマンス

他の惑星からの知的生命体が地球をひそかに侵略していた。
銀色のムカデに似たこの寄生体は、人間の脳に寄生して意識を征服する。瞳孔が光る以外は外観がまったく変わらず、しかも宿主(Host)の過去の記憶にアクセスできる異星人たちは、静かに人々と入れ替わっていたのだ。手遅れになるまで侵略に気づかずマイノリティになってしまった人類だが、地球を取り戻すために地下にもぐって抵抗を続けた者たちがいた。そのひとりMelanieは、ついに侵略者に捕まり、「Wanderer」と呼ばれるSoulのHostになった。しかし、強い意志を持つMelanieは、簡単に自分の身体を明けわたそうとはせず、Wandererを悩ませる。Melanieの記憶に残るJaredに強く惹かれ始めたWandererは、消えることを拒否するMelanieの意識とともにアリゾナの砂漠をさまよい、ついにJared、Melanieの弟、叔父たちの隠れ家を探しだす。

Melanieを愛していた者たちは、Wandererとして再会したMelanieを敵として殺害するべきか、それともまだ意識の底に残っているMelanieとして受け入れるべきか悩む。しだいにほとんどの者が心優しいWandererをWandaとして受け入れ始めたが、Jaredだけは彼女を憎み傷つける。
人間に同情を覚え愛しはじめたWandererは、自分の選択を悩む。

SFとして面白くなりそうな設定はあるのだが、ストーリーはしだいに「ひとつの体にふたつの心を持つWanderer/Melanieの三角関係(四角関係)」が中心になり、SFファンにとっては歯がゆい思いがしないでもない。SFにあまり馴染みがないロマンスファンの女性にとっては、SFの世界に触れる機会になるかもしれない。欠陥はあるものの、エンターテイメント性が高く、はらはらどきどきしながら最後まで一気に読みきれる本である。

追記:「そうそう、あれ書くの忘れてた」と思い出すたびにまた忘れていたのですが、最初に読んだときに、ロバート・ハインラインの有名な「人形つかい」を思い出しました。ナメクジのかわりにムカデですが、コンセプトは酷似しています。

●読みやすさ ★★★☆☆
簡潔な英語です。SFですが難しい専門用語などは出てきません。難易度としては★四つのTwilightとほぼ同じですが、こちらのほうがやや複雑で長編なので★三つにしました。
ですが、エンターテイメント性が高いので、ロマンスやスリラーが好きな人であれば、どきどきハラハラしているうちに簡単に読みきってしまえるでしょう。

●ここが魅力!
寄生虫のような知的生命体の設定と主人公のひとりWandererの過去はなかなか興味があります。ファンタジー/パラノーマルのロマンスとしては「Twilight」よりもずっと複雑なので、「Twilightよりも面白かった」という人がけっこう多いようです。
あくまでエンターテイメントが目的の本です。

●アダルト度 ★★★☆☆
性描写のきわどさ、という点ではYA(ヤングアダルト)向けに書かれた「Twilight」シリーズ(特にBook 4「Breaking Dawn」)よりもずっとマイルドでキス程度ですが、女性に対する虐待の描写は過度にしつこく、高校生以下には不向きだと思います。

●この本を楽しんだ方にはすでにTwilightは読了でしょうからこんな本はいかが?

City of Bones

パラノーマルファンタジー/ロマンス

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

普通の少女ベラとバンパイアの少年エドワードのロマンスに全米の少女が憧れた「Twilight」シリーズの作者Stephenie Meyerによる初めてのSF – The Host」への3件のフィードバック

  1. 宇宙人が登場すると言うだけでSFのジャンルに入れると誤解を招きかねません。この小説はSFではありません。作者自身もインタビューでそう言っています。あくまでも、人間ドラマと捉えるべきではないでしょうか。
    一言でまとめると人間の本質とは何かを問いかけている、彼女の最高傑作だと思います。彼女自身も “This is my best written work and the most important story I have told” と述べています。
    続編を期待したいですね。

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  2. grungirさんこんにちは。
    う〜ん。ということは、Stephenie MeyerはSFには「人間の本質とは何か?」という問いかけとか「人間ドラマ」がないと考えていらっしゃるのかしら?
    私もこれをSFとするべきかどうか悩んだのですが、それは「人間ドラマ」があるかどうかではなくて、「ロマンスブックのジャンルではないか」と迷ったのです。彼女はロマンスブックに入れて欲しかったのかな?
    SFにはこの本よりもっと「人間とは何か?」を考えさせる本が沢山ありますから、Meyerがそう言ったとしたら、あんまりSFを見下げないでほしいな、というのが私の正直な意見です。
    たとえばアーサーC.クラーク賞を受賞したアトウッド(ノーベル文学賞候補でもある)のThe Hand Maid’s Tale( http://watanabeyukari.weblogs.jp/yousho/2009/10/the-handmaids-t.html )とか、有名なル・グィンのThe Left hand of darkness(闇の左手) ( http://watanabeyukari.weblogs.jp/yousho/2009/06/bea-cat-dreams-.html ) とか、RothfussのThe Name of the Wind( http://watanabeyukari.weblogs.jp/yousho/2008/12/the-name-of-the.html )をぜひお読みになっていただきたいです。そうすれば、SFというジャンルに人間の本質を問いかける文芸小説も含まれているのだということがおわかりになっていただけると思います。
    もっとSFを尊敬してほしい、というのが私からのたってのお願いです。

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  3. grungirさんこんにちは。追記です。
    メイヤーにSFを馬鹿にされていると思ったので、ちょっと過剰反応しすぎちゃいましたが、grungirさんのブログを拝見して、私が誤解していたことがわかりました。ごめんなさい。
    SFを期待して読むと、「なんだこれSFじゃないじゃないか」と失望する読者がいる。ということなんですよね[E:coldsweats01]
    たしかにそれはあると思うので、その点についてはレビューで触れたつもりですが明確ではなかったかもしれません。
    ただし、多くのドラマやSFを読んでいる者としては、The Hostは上記のSFやファンタジーほど「人間の本質とは何か」を描ききっている傑作とは思えません。でも娯楽作品としてはけこう良い出来だと思っていますので、アマゾンでも★4つの評価をさせていただいています。

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