SF作家からアイディアを得る米国の防衛機関

常日頃から堅苦しい機関でも柔軟な発想を重んじるところがアメリカという国のユニークさだと思っていましたが、the Washington Postのこの記事を読んでさらにその印象を強くしました。

2009年国土安全保障科学技術ステークホールダー会議(2009 Homeland Security Science & Technology Stakeholders Conference)にSF作家たちを招き、防衛の斬新なアイディアをブレインストームしているというのです。ですが、これは目新しいことではなく、Sigmaと呼ばれるグループがリクルートした40人ほどのSF作家たちは、以前から空軍などの軍隊やNATOなどの機関に対してこのようなサービスを提供しているとのことです。
日本だと、「ふざけたことに税金を使うな!」という声が聞こえてきそうですが、作家たちはみなボランティアです。これらの機関が作家に支払うのは交通費だけ。私の夫も、ソーシャルネットワークとマーケティングの専門家として米国空軍にコンサルティングや講演のボランティアをしていて、昨日もそのボランティア出張から戻ったところ。出してもらうのは交通費だけです。自分のできる形で祖国のためにボランティアをするのはオバマ大統領が広めようとしているボランティア精神のひとつです。

Sigmaに属するのは科学分野を専攻した者だけですが、そういうSF作家が多いのもアメリカの特長です。Sigmaの創始者は米海軍のエンジニアでSF作家のArlan Andrews。また、今回の出席者のひとりCatherine Asaroは、ハーバード大学で物理学の博士号を取得し研究機関にも勤めた科学者です。私は読んだことがないのですが、代表作は邦訳もされているThe Saga of the Skolian Empire(スコーリア戦史)とのこと。冒険とロマンスSF(「ハーレクインのSF版」という意見もあり)ということで、昔はやったスペースロマンみたいですね。でも、物理学者にしかできないような発想も多いようです。

1.スコーリア戦史の第一巻(すでに廃刊)

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2.Catherine Asaroの最新作(この表紙、ちょっと笑っちゃいますよね)

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ワシントンポストの記事にもありますが、政府や企業のシリアスな研究開発部門にはSFやファンタジーファンが多いようです。高校生の娘やその同級生をみていても小学生のときからSFやファンタジーが好きだった子は、現在理数系が得意になっています。生まれつきそういう傾向があるのかもしれません。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

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