アーヴィングのダイハードなファンのための新作ーLast Night in Twisted River

John Irving
576ページ
Random House
2009/10/27発売(来週火曜日)
文芸小説/現代小説

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The World According to Garp (ガープの世界)で有名なアーヴィングの4年ぶりの新作。

1954年、ニューハンプシャーの木材伐採作業地にあるTwisted RiverでAngel Popeと名乗る新人の若者が事故で死ぬ。それは伐採集落の料理人 Dominic Baciagalupoの妻が事故で亡くなった川でもあった。このアクシデントが間接的にもうひとつの重大なアクシデントを招き、その結果Cookieというあだ名のDominicとその息子Dannyは逃亡者となる。
Dominicは自分の母と妻の家族が住むノース・ボストンに移り、そこでAngelの母と新しい生活を始めるが、彼の命を狙うTwisted Riverの警官に嗅ぎ付けられて、場所を移動する。父と息子は追っ手から逃れるために、ボストン、アイオワ、ヴァモント、トロント、と転々とする。幼いころから作家になることを夢見て育ったDominicの息子Dannyは、Danny Angelというペンネームで作家として成功するが、どこに逃れても運命に翻弄される。

この作品にも、おなじみのニューイングランド、熊、アクシデント、レスリング、アイオワ、そして若い男性と年上の女性との性関係、切り取られた身体部分、などが登場する。また、作家のDanny Angelがアーヴィングと同じ私立高校で学び、ヴォネガットに指導を受け、自伝的な要素のある小説を書く、というのもアーヴィングらしい。

アーヴィングの面白さ(少なくとも私にとって)は、過剰とも言えるディテールにある。金曜日には肉を食べないカトリックのフレンチカナディアンと彼らとは相容れない英語圏の木材伐採労働者のためにDominicが別々に作る料理、スクエアダンスのムーブメントDo-si-do(Dannyはこれに別の意味もつけている)、イタリア系移民が多いノースボストンに住む孤独なアイルランド系の教師の妄想、ピザに加える蜂蜜の秘訣、など、面白い部分は山ほどあるのだが、途中でだんだんアーヴィンの口調が鼻につき始めてきた。

突拍子のないキャラクターは「ガープの世界」では楽しませていただいたが、Last Night in Twisted Riverではありきたりで滑稽にさえ感じるのである。特に女性の登場人物がひどい。小柄で青い目のとても美しい女性か、男性よりも長身で逞しいか、300ポンド(136kg)もある巨大な女しか出てこない。それも皆そろって男性を誘惑し、襲い、ぽいと捨てられても平気だ。日本人が読むと米国にはこんな女たちしかいないと勘違いされそうだが、アイオワでDannyたちが関わるアジア系の女たちを読めばそうではないことがわかるだろう。中国、韓国、日本人と出てくるのだが、誰もそれらしくない。アジアの女性とちゃんとつき合ったことがないのが原因なのか、単なる女嫌いなのか、そこのところはよくわからない。女性の登場人物に限って言えば、米国の田舎を突っ切るハイウエイに並んだファーストフードの看板を読んでいるのをさほど変わらない。
ベトナム戦争や同時テロ、2000年と2004年の大統領選挙についても書いているが、(私と彼の政治的立場は似ているものの)文学的な表現としては失敗していると思った。

「良い作家というものは距離を置くべきである」というのがアーヴィングの持論のようである。だが小説の中でそれを説教されるこっちはたまったものではない。そのくせさほど距離を置いているようにも感じない。「そんなに優れた作家であるならば、私の鼻につかない方法でそれを実現してください」とお願いしたくなった。

1999年にカナダのテレビ番組でアーヴィングは A Man in Fullを出版したばかりのトム・ウルフのことを"I can’t read him because he’s such a bad writer,"と酷評したらしいが、当時A Man in Fullを読んだ者として言わせていただければ、A Man in FullのほうがLast Night in Twisted Riverよりもずっと面白かった。少なくともウルフは毎回異なるテーマにチャレンジするし、小説の中にエゴを出さない。そういう意味ではアーヴィングよりもよほど距離を置いている。また、簡潔なウルフの文章のほうが、括弧つきでいちいち説明する癖のあるアーヴィングよりも潔さを感じる。だが、もちろん、私はアーヴィングが軽蔑する類いのブンガクを知らない読者にすぎないのであろう。

Last Night in Twisted Riverは、ダイハードなアーヴィングファンであれば「これぞアーヴィング!」と歓迎する作品である。だが、そうでない人の反応はまったく予想できない。私と異なる読み方をする人は必ずいるはずだから「自分で読んで結論を出してください」というのが、私からの正直なアドバイスである。

●読みやすさ ★☆☆☆☆

文章が難解だというわけではありません。
話があちこちに飛ぶのと、長いことが難点です。
そして中盤で流れが滞るのも問題です。それを越すと、ストーリー展開が早くなってまた読みやすくなります。

●アダルト度 ★★★★☆

アーヴィングですからセックスの話は沢山出てきます。全部ドライといえばドライですが。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

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