閉ざされた世界に逃げ道はあるのか?中高生向けSF新シリーズ Inside Out

Maria V. Snyder
320ページ(ソフトカバー)
Harlequin Teen
2010/4/1発売
SF/ヤングアダルト(中高生向け)/シリーズ第一部

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Trellaが住む世界は支配者階級が住むUpperと労働者階級が住むLowerレベルに別れている。Lowerレベルに住むTrellaの仕事はこの閉じた世界に網のように張り巡らされたパイプの内部を掃除することである。Lowerレベルでは家族を持つことは許されず、Care Motherと呼ばれる職業養母が子どもを育て、成人した子どもたちは肉体労働につかねばならない。人口過密のLowerレベルの窮屈さに絶えられないTrellaはふだんオフのときでもパイプの中で過ごし、 同じ施設で育ったCogon(Cog)という兄に近い存在の友人しかいない。

Cogの夢はこの息がつまりそうな世界から外の世界に逃げ出すことで、その情報を知っていそうな「Prophet」が出現するたびに望みを持つ。Trellaにはそんな望みはなかったが、Cogが見つけて来た新たなProphet、Broken Manは、Trellaの生誕の秘密も知っているらしい。

UpperとLowerの世界の接点はPop Copと呼ばれる警察である。この組織を司るファミリーが上と下の世界が手を結ばないようにそれぞれを憎み、軽蔑させるような情報を流している。アクシデントでUpperに住むRileyと知り合ったTrellaは、Upperの生活は自分たちに知らされていたような甘いものではないことを知り、RileyもLowerの人間が自分たちと何ら変わらないことを学ぶ。ここから「外」への出口を探す UpperとLowerの協力関係が生まれる。

孤独で嫌われ者だったTrellaはいつのまにか謀反グループのリーダー格になってしまう。

●感想その他もろもろ

これまでもPoison Studyの作者Snyderの出版社がハーレクイン(これまではハーレクインのロマンス以外を扱うMIRA)だというのは問題だと思っていたのですが、今回のInside Outが Harlequin Teenから出版されたというのには特別大きなため息をついてしまいました。
 Harlequin Teenは爆発的に売れたトワイライトの影響を受けて去年新たに設けられた部門です。私が昨年5月に入手した数冊のARC(アドバンスド・リーダーズ・コピー)をまだ読んでいないのは、「どうせティーン向けの甘ったるいロマンスファンタジー」と決めつけて、後回しにしていたからです(後回しにすると、たいてい新刊に気を取られてだんだん読まなくなる)。それで今回彼女の作品を発売前に入手したときの私の印象も「ついにハーレクインに説得されてロマンスに移動したか」とがっくりし、「後回し」にしたのでした。

ところが読んでみてびっくり。
これは完璧なSFです。
一応オマケ的にTrellaとRileyのロマンス的なところはありますが、その程度は2010年ニューベリー賞受賞作When You Reach Meに出てくるシーンくらいです。つまり普通の青春小説以下。
似た雰囲気を持つ作品は、昨年発売されたThe Maze Runnerと爆発的に売れたThe Hunger Gameです。どちらも男子生徒にアピールする作品であり、このInside Outもロマンスブックが好きな少女向けではなく、SF好きの男女向けです。それなのにハーレクイン・ティーンでは、男の子は絶対に手に取らないでしょう。
これはもちろん作家のせいではありません。出版社もハーレクインであることはやめられないし、結局のところ作家にあった出版社と契約しない(できない)エージェントが無能なんですね。 Snyderとは何度かメールを交わしたことがありますが、とても好感の持てる人です。Poison StudyシリーズにしてもGlass Studyシリーズにしても、不思議な世界を作り上げる卓越した才能があり、「ファンタジー」と「SF」作家であるべき人なのです。出版社の型にはまるようにスタイルを変えてゆかねばならぬということなら、本当に気の毒です。

●読みやすさ ★★★★☆

ティーン用なのでいつもよりさらに読みやすいレベルです。
障壁になるのはSF なので造語が多いというくらいです。

●アダルト度 ★★☆☆☆

「妊娠したくないから結婚(ここではMateになるという風に表現されている)しない」といった表現や子どもが生まれるシーンなどがありますが、実際のラブシーンはキス程度。それもドライ。ほとんどロマンチックな部分はありません。

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