禁酒法時代の米国の田舎町の雰囲気が良く出ている歴史ファンタジー The Boneshaker

Kate Milford
384ページ(ハードカバー)
Clarion Books
2010年5月24日発売
児童書(9−12才)、YA/歴史ファンタジー/冒険

http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0547241879
http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0547241879

TGSA04812_m
1913年、ミズーリ州の田舎町Arcaneは、その名(「不可解な」という意味)のとおり不思議なことが起こる町で、特にcross roadについては言い伝えがあった。13歳の少女Natalieが母親から聞いた逸話のひとつが、町に住む黒人ブルースミュージシャンのTomがcross roadでdevilに出会った話だった。Tomがいかにしてdevilをやりこめて魂を取られずにすんだのかという話が本当であれば、Tomは現在生きている筈がない年齢だ。Natalieは、Tom本人からその話を聞いてみたいと思う。しかし、Natalieの目下の悩みは、Boneshakerという自転車(右の写真)を乗りこなすことだった。

Traveling-medicine-show1 ある日、怪しげな治療法と薬を売るカーニバルのようなMedicine Showがやってきた。cross roadで車輪が壊れたので、Natalieの機械技師の父が修理をしている間、Medicine Showをすることになった。何も起こらない退屈な日々にやってきた刺激的な見世物に町の住民たちは魅了されるが、Natalieはshowの持ち主Dr. Jake Limberlegを見て、すぐさま嫌な直感を覚える。けれども、このshowの怪しさに気付いているのはNatalieだけのようなのだ。人々はshowの「無料診断」を訪れて、Dr. Limberlegの処方したGinger-Angelica Bittersを買い求める。(左の写真はNewChannel9,下の写真はMedicine Show Blogより借用)

危機感を覚えたNatalieは、友人のMirandaやTomの協力を得てMedicine Showをスパイするうちに、だんだんDr.
Limberlegとショーの恐ろしい本質を知り始める。

Patmed

●ここが魅力!

この物語の面白さは、米国の禁酒法時代(実際にはそのちょっと前になります)の田舎町の雰囲気がたっぷり出ているところです。ですから、物語を楽しむためには、いくつかの米国の歴史を知っておく必要があるでしょう。

800px-Jamaican_ginger 禁酒法時代のアメリカでは、アルコールの製造、販売、輸入、飲酒のすべてが禁じられていました。そこで庶民の間に流行したのが、「Jamaica ginger(通称Jake)」なる民間薬です。外見上は薬の形を取っていますが、実際は、アマチュア化学者兼密造酒たちが開発した、取り締まりのためのテストをくぐり抜けることができるアルコール飲料です。これには神経を侵す危険なリン酸トリクレジルが含まれており、飲んだ人々は神経を侵されて歩けなくなりました。その状態が"jake walk" あるいは "jake leg"と呼ばれたのです。これが、The Boneshakerに登場するDr. Jake Limberlegの処方するGinger-Angelica Bittersの背景です。彼の名前そのものが歴史を反映していますね。

Jack-o-lantern_2003-10-31 もうひとつ日本の読者に分かりにくいのが、Jackという登場人物です。これには、米国人がよく知っている「Jack-o'-lantern」の民話が反映しています。
ハロウィーンで、かぼちゃを人の顔に切り取り中にろうそくを入れてlanternにしたものを、Jack-o'-lanternと呼びますが、それはアイルランドから来た民話に基づいたものなのです。いろいろなバージョンがありますが、いずれも天国(Heaven)には受け入れてもらえない小悪党のJackが、悪魔を騙して地獄(Hell)にも入れてもらえなくなったために、悪魔から受け取った灯火をlantern(ちょうちん)にして永久に地上を彷徨う、というものです。アイルランドの民話では野菜がTurnipですが、米国ではpumpkinになっています。

民話や歴史を取り入れ、カーニバルにつきまとう怪しく恐ろしい感じをよく表現している本書は、子供だけでなく、大人でも十分楽しめる複雑さです。ふだん触れることのない場所と時代ですから、かえってその雰囲気にどっぷりつかって楽しめるのではないかと思います。挿絵も沢山入っていますが、私が読んだのはAdvanced Reading copyの下書きの状態で、最終的なイラストの出来は判断できません。どちらにしても日本のイラストとはタイプが異なるので、それもある意味では興味深いかもしれません。

●読みやすさ 中程度〜やや難しい

文法的には簡単ですが、登場人物が多くてそれを把握するのが困難かもしれません。また、歴史背景を理解していないとぴんとこない部分が多く、それが入り込みにくさを増す可能性はあります。

ですが、上記の「ここが魅力!」の部分にヒントを載せましたので、それを理解しておくと、がぜん分かりやすくなると思います。

●アダルト度 

親の深刻な病、悪魔との魂の取引、といった暗いテーマがありますし、全体的にちょっと恐ろしい雰囲気があるので、小さいお子さんや感受性の強いお子さんは悪夢を見る可能性もあります。けれども、そうでなければ小学校3年生くらいから十分楽しめる本です

コメントを残す