中学生の「虐めと自殺」という重いテーマを詩的に問いかける Orchards

Holly Thompson
ハードカバー: 336ページ
出版社: Delacorte Books for Young Readers (2011/2/22)
ヤングアダルト/思春期の心理・社会問題/虐め

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今月22日発売ですが、早めにご紹介。

母親が日本人で父親がユダヤ人のハーフKanako Goldbergは、ニューヨークに住む”普通の”女子中学生だ。けれども、友達グループがフェイスブックや携帯メールで陰口を言い、意地悪な言葉を投げかけた同級生のRuthが自殺し、少女たちは周囲から非難の目で見られるようになる。事件の後、米国の夏休み(6月)が始まり、少女たちは夏のキャンプなどに送られてバラバラになる。Kanakoは、母の実家である静岡の蜜柑農家に一人で送り込まれる。


バイリンガルとして育てられたKanakoだが、日本の家族とあまり一緒に過ごしていないので、会話についてゆくのも大変で、習慣にも慣れずに戸惑うことばかりだ。特に家族のリーダー格の「ばあちゃん」の小言に何度も不平を覚えるが、いとこたちと一緒に蜜柑畑で働くうちに、大家族の一員になる喜びを覚えてゆく。

日本の学校はまだ夏休みに入っていないので、Kanakoは地元の中学に1ヶ月だけ臨時編入する。Ruthの事件が頭から離れないKanakoは、そこで虐められている同級生に声をかけて、クラスの皆から無視されるようになる。

事件が起きてから、Kanakoは毎日頭の中でRuthに話しかけ続けていた。最初のうちは自分をこんな状況に置いたRuthに怒りすら覚えていたのだが、静岡の田舎で暮らすうちに、次第に自分たちがしたことの意味を把握しはじめる。

そして、日本とユダヤの伝統から過去を反省してよりよく生きようと考える。

●ここが魅力!

Orchardsは、主人公のKanakoが「You」とときおりRuthに語りかける、詩の形の小説です。

中学生の苛めと自殺、という重いテーマで、現代らしくFacebookやTexting(携帯メール)でのネット苛めも示唆しています。こういった事件が起きると、虐めた子どもたちが即座に非難されますが、考え方が未熟な「普通の」子どもたちが意図せずに過ちをおかしてしまうこともあるのです。著者は、Kanakoの声を介して、そんな子どもの心理を紹介しています。

主人公が日本人とユダヤ人のハーフというのは興味深い設定です。 調べてみると、著者のHolly Thompsonは日本在住の作家で、横浜市大で教えていらっしゃるようです。蜜柑農家についても実際に18ヶ月訪問して取材されたとのことで、日本らしい日本が描かれていました。特に「ばあちゃん」がKanakoの「お尻が大きい」ことを何度もコメントして「腹八分目」を強要するところは、私にも思い当たることがあります。Kanakoに代って「ほっといてくれ」とムッとしてあげましたが、著者はそれも日本の美しい伝統として親しみをこめて描いてくれていたようです。

虐め、文化習慣の差、など中学校で課題図書にして、ディスカッションするのに適した本だと思いました。

●読みやすさ やや簡単

ページ数は多いのですが、詩の形ですし、イラストが多いので、あっという間に読めてしまうでしょう。
詩といっても、難解な現代詩ではなく、本当に中学生の子が書いたような素直な詩です。ですから、高校で普通に英語を学んだ人であれば読める筈です。

ただし、詩ですから、普通の英文とは文法的に順序が違ったりしますので、それは心得ておいてくださいね。

●対象となる読者

小学校高学年から中学生が最も適していると思います。

 

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