Oliver Sacks
ペーパーバック: 327ページ
出版社: Vintage
(1995/2/7)
脳神経科学・医学/エッセイ/ノンフィクション
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「An Anthropologist On Mars 」は 16年前に出版され、「火星の人類学者--脳神経科医と7人の奇妙な患者 」として邦訳されたものが既に絶版になっているが、7つのエッセイのひとつ「The Last Hippie」が映画化されたので、新たにご紹介しようと思う。
1950年代にニューヨーク市の中流階級の家庭で育ったグレッグは、音楽の才能がある利発な子どもだったが、ティーンになるとヴレッジに通い、ヒッピームーブメントの影響を強く受けて政府や権威に反抗的になっていた。
この当時の多くの若者のように、グレッグも「自分探し」をするために家を出て「ヴィレッジ」に移り、クリシュナ意識協会の運動をするハレ・クリシュナに加わった。ハレ・クリシュナに加わって2年目からグレッグには脳腫瘍による身体症状が出ていたのだが、協会のスワミは、グレッグの意識が啓発されて聖なる状態に近づいている証拠だととらえていた。グレッグの身を案じていた両親がようやく息子への会見を許されたときには4年の月日が経っており、脳腫瘍は脳の多くの部分を破壊していた。最初の症状が現れていたときに発見していたらダメージを防げた筈の良性腫瘍だった。
グレッグの記憶は1960年代後半でストップし、新たな記憶を作ることが不可能になっていた。また、盲目で聖者のように無表情にじっと壁をみつめるだけのグレッグは、病に侵される前の利発で活発な彼とは別人になっていた。
ところが、大好きだったロックバンドの音楽を耳にしたとたん、グレッグは生き返ったかのように表情を取り戻して活発に話し始めるのだった。彼が特に愛していたのがグレイトフル・デッドだった。サックス博士は、グレイトフル・デッドのドラマー、ミッキー・ハートの協力を得て、マディソン・スクウェア・ガーデンでのグレイトフル・デッドのコンサートにグレッグを連れて行った。翌日にはコンサートに行ったことすら覚えていなかったグレッグだが、そのコンサートで初めて耳にしたデッドの曲(彼の記憶が消えた1968年以降に作曲されたもの)はちゃんと記憶していたのである。
この「The Last Hippie」の他にも、奇妙で、けれども感動的な6つのエピソードが含まれている。まだの方はぜひ読んでみてほしい。
●映画
映画「The Music Never Stopped」は、このエピソードを元にしたものです。
「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」でグレイトフル・デッドに深い縁がある私たち夫婦と、オリバー・サックス博士の影響を受けてコロンビア大学で脳神経科学を学ぶことにした娘にとって、特別な感慨がありました。
サックス博士の代わりに女性研究者を使ったり、コンサートに連れて行ったのを父親にしたりしているのですが、重要なエッセンスはきちんと伝わってきます。インディ映画らしい素朴さと、グレイトフル・デッドに対するグレッグの愛情、両親(とくに父親の)グレッグへの愛に胸がつまりました。ぜひ、エッセイと映画の両方を体験していただきたいと思います(米国での劇場公開は終了したので、DVDでどうぞ。日本ではまだ出ていないようです)。
●読みやすさ 普通〜やや難しい
文法的にはストレートで読みやすいのですが、医学用語や難しい単語が沢山出てきます。けれども、日本の英語の授業が得意だった人や、論文を読むことが多い人には、日常用語が多いYA(ヤングアダルト)ものや、解釈や想像力が必要な文芸小説よりも読みやすいかもしれません。
●おすすめの年齢層
読めて理解できるのであれば、何才でも。