イラストと文章で2つの物語が進行する緻密でユニークな児童書 Wonderstruck

Brian Selznick
ハードカバー: 637ページ
出版社: Scholastic Press
ISBN-10: 0545027896
ISBN-13: 978-0545027892
発売日: 2011/9/13
児童書(小学生から中学生)/歴史/博物館/聴覚障害

コールデコット賞を受賞した,The Invention of Hugo Cabretの著者Brian Selznickの最新刊で、2011年の「これを読まずして年は越せないで賞」の児童書部門候補作品のひとつ。

The Invention of Hugo Cabretのように、緻密な鉛筆画と文章で物語が進行する。
だが、Wonderstruckでは、文章が伝える物語と絵が伝える物語とでは年代も主人公も異なる。


文章のほうはBenという少年のストーリーである。
最近母を失ったBenは父親が誰なのかを知らずに育った。父に関する情報を探しあてた直後に聴力を失ってしまうが、それでも彼はひとりでニューヨーク市に父を探しに行く。

絵だけで進行するのは、Benの時代より50年前の聴覚障害者の少女のストーリーだ。
彼女もまた、ある人を探し求めてニューヨーク市に行く。

この二人の物語がどのように絡んでくるのかは、読者自身が見つけていただきたい。

Wonderstruckには、いろいろなテーマがぎっしり詰まっている。
聴覚障害者、手話、博物館、ニューヨーク市…、著者のSelznickは歴史的に正確な情報を集め、それを鉛筆画に精密に描いている。一度ざっと読んだ後で、これらの絵を一枚一枚じっくり眺めるのも楽しい。

小学校4年生くらいからは子どもがひとりで読んで楽しめるが、親も一緒に読むことをおすすめする。
日本での聴覚障害者の歴史とか、手話の話とか(私は学生時代に手話を学んでいて、ちょっとした通訳もしたことがある。もう忘れてしまったが)、博物館のことなど、親子が一緒に調べると、学ぶことの楽しみを共有できるし、何よりも子どもと語り合う貴重な体験ができる。

素晴らしい鉛筆画だが、素人にでも「私にもできるかも…」と思わせてくれる親しみやすさがある。絵が好きな子であれば、「私も絵でストーリーを書いてみよう」と思うかもしれない。

●読みやすさ やや読みやすい

分厚いが、文章はさほど多くない。
たまに分からない単語が出てくるかもしれないが、文章としては簡単である。

●おすすめの年齢層

ネイティブであれば、小学校1〜2年は両親と読み、その後はひとりで読むレベル。
内容的には、小学校高学年から中学生。
日本人の読者の場合には、大人も十分楽しめると思う。

親子で読んで語り合うのにおすすめの本。

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