ホラー小説より怖いかもしれない心理スリラー Gone Girl

Gillian Flynn

ハードカバー: 432ページ

出版社: Crown (2012/6/5)

ISBN-10: 030758836X

ISBN-13: 978-0307588364

発売日: 2012/6/5

心理スリラー/ミステリー

2012年これを読まずして年は越せないで賞候補作(に私が推します)

 

出会った頃のAmyとNickは完璧なカップルだったのに、結婚して数年もしないうちに互いの欠陥に辟易するようになっていた。
裕福だったAmyの両親がお金を失ったためにAmyの貯金もなくなり、不況のあおりでNickは雑誌のライターの職を失ってしまう。住んでいたアパートメントを手放すことになったふたりは、がんにかかったNickの母の面倒を見るためにも故郷に移住することを決意する。ニューヨーク市で育ったAmyにとって中西部の田舎町での生活は息が詰まるものだったが、NickはAmyの苦労を理解しようとしない。


ふたりの5年目の結婚記念日にAmyが姿を消し、自宅には争った痕跡が残っていた。
Nickは警察だけでなく仲が良い双子の妹にすら嘘をつき、怪しい態度を取る。
Amyが残した結婚記念日の恒例行事の「宝物探し」にも、この事件のヒントが潜んでいるようだ。

AmyとNickふたりの視点で交互に語り進められるこのミステリーは、複雑な事件の真相がかすかに見えて来たところで、突然ぞっとするような心理スリラーに方向転換する。
読者は何を信じてよいのか分からなくなるが、分かって来たところで今度は蜘蛛の巣に引っかかって逃れられなくなった虫のような気分を味わうことだろう。

ホラーよりもある意味ずっと怖い心理スリラーである。

 

●ここが魅力!

約2年前に本ブログでご紹介したSharp Objectsの作者Gillian Flynnは、病的な心理を描くことにかけては天才的です。

一見ふつうに見える人の暗い心に気づいたときには手遅れ、というまるで底なし沼に足をつっこんでしまったかのような絶望感にすら襲われます。

でも本書は底なし沼というよりも、蜘蛛の巣にひかかってしまった虫の気分だと思います。

蜘蛛が近づいてくるけれども、なす術がない。その恐ろしさを十分味わえます。

読者を騙すのも上手な作家です。驚きやどんでん返しが何度かありますので、少々長いのですが、飽きることはないでしょう。

読後感が良くないことは保証しますが(笑)、面白いことも保証します。

ホラーの代わりにごゆっくりお楽しみください。

 

●読みやすさ 中程度からやや読みにくい

 

やや長いことと、心理を深く読む必要があるので、楽しむためにはある程度洋書を読み慣れている必要があるでしょう。

 

●おすすめの年齢層 高校生以上

性的な描写がありますので、高校生以上。

 

 

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

ホラー小説より怖いかもしれない心理スリラー Gone Girl」への2件のフィードバック

  1. 洋書を読んでは、こちらのブログにレビューが書かれていないか確認しています。
    Gone Girlに関しては、絶対にこちらにレビューがあるのではないかと読了後勝手に確信し、検索してみますと、やっぱりあったので大変嬉しいです。
    私は2012年どころか、2017年の今になって読んでいますが・・・。

    私は英語圏で生活したことはなく、ただ趣味で勉強しているだけの英語学習者なので、口語表現独特のニュアンスは完全には把握できていないと思います。
    けれどもシャッター街のようになってしまった地方の町や、IT化で仕事を失った主人公の現実、男女や親子の関係性の問題など、国境を越えて身につまされる問題も沢山重層的に表現されていて、いろいろ考えさせられました。
    既に2017年ですが、この作品に出会えてとてもよかったと思っています。

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  2. Yuminさん、
    コメントありがとうございます。
    たしかに口語表現は、現地で暮らさないと肌感覚ではわかりにくいですよね。
    でも、本を沢山読んでいると、そのうちに、そこで暮らしているような感じになってきます。
    この本がお読みになれるということは、きっとそこまでは短距離になっていると思います。

    これからも沢山良い本に出会えるといいですね。
    私もそう願っている2017年です。

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