期待しなければそれなりに楽しめる2013年ヒューゴー賞受賞作(長編小説部門)『Redshirts』

著者:John Scalzi

ペーパーバック: 317ページ(2013/1/5)

出版社: Tor Books

ISBN-10: 9780765334794

発売日: 2012年6月

難易度:中級レベル(高校英語をマスターしたレベル)

適正年齢:PG15(高校生以上)シーンはないが、性的なジョークが満載

ジャンル:SF、パロディ、娯楽小説

キーワード:スタートレック

2013年ヒューゴー賞受賞作(長編部門)


時は未来の宇宙。

人類の合同組織Universal Unionの旗艦である『イントレピッド(Intrepid)』に配属されることは、軍人にとって栄誉あることだった。そして、Intrepidの有名な艦長や上級士官たちが惑星への救難活動や探査などの"Away Mission"に出かけるときに随行することは、さらに栄誉なこととみなされていた。


だが、宇宙生物学者として自ら志願してIntrepidに加わったAndrew Dahlは、この有名な旗艦での奇妙な現象に気づく。それは、艦長や士官たちがAway Missionに行くたびに致命的な災難が起きるということだった。そして、艦長と上級士官たちが信じられないような危機を免れるのに、随行した者の何人かが死ぬということである。そして、死ぬのは、必ず下級士官である。

『スタートレック』のファンなら、ここで既にタイトル『red shirts』の意味が分かる筈だ。

赤シャツを着た乗組員はすぐ殺される』という、みんなが知っているお約束ごとである。

 では、赤シャツを着た乗組員としては、どうすればいいのか?それが起こっている原因を突き止めて、自分が死ぬ前になんとかしなければならない….。

 

子どもの頃にオリジナルのスタートレックの大ファンだった私にはよく分かるパロディだし、あちこちにちりばめられたユーモアも楽しめた。Codaのそれぞれの文章スタイルの差もクレバーである。

短篇だったら、星新一的なこれらのクレバーさを評価したと思うが、ヒューゴー賞に値する長編小説かというと首を傾げざるを得ない。中長編(Novella)受賞作のThe Emperor's Soulに比べて、読後の満足感が薄すぎる。長編の候補作にもっと深い作品はなかったのか、後で調べてみたいところだ。

もしかすると、この作品が受賞したのは、ファンが多い著者John Scalziへの人気投票のようなものかもしれない。

この1年の最高傑作とは思わないが、SFの長編としては短いし、簡単に理解できるし、笑えるし、「ヒューゴー賞受賞作!」として期待せずに読めば、十分楽しめるであろう。

 

 

 

 

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