ユダヤ教伝説とアラビア神話が19世紀末のニューヨークで出会う幻想的なラブストーリー『The Golem and the Jinni』

著者:Helene Wecker

ハードカバー: 496ページ

出版社: Harper

ISBN-10: 0062110837

発売日: 2013/4/23

適正年齢:PG15(高校生以上)、描写は露骨ではないが性的コンテンツあり

難易度:上級レベル(英語ネイティブの普通レベル)

ジャンル:現代文学/歴史小説/ファンタジー

キーワード:伝説(アラブ、ユダヤ)、ラブストーリー、宗教、スピリチュリティ

 


移民たちが世界から押し寄せて来る混乱の19世紀末のニューヨーク市で、一組の男女が偶然に出会う。彼らは、互いに相手の異様さを察知し、興味を抱く。ポーランドから来た女Chava(ハバ)はユダヤ教の呪術師が作ったGolem(ゴーレム)で、Ahmed(アーメッド)は1000年前にシリアで魔術師に捉えられたJinni(ジーニー)だった。


Golemは、ユダヤ教の神話や伝承に出て来る泥で作られた人形である。呪術で結びつけられた主人の命令だけに従うようにできているが、いずれ凶暴化することでも知られている。呪術師にGolemを作るように依頼した男は、新世界のニューヨークに連れて行く妻に知性と好奇心、そして徳を求めた。だが、呪術師の命に背いて船旅の途中でGolemを目覚めさせた男はニューヨークに到着する前に病死してしまう。

赤ん坊のように無知なためにニューヨークで窮地に陥ったGolemの正体を見破ったのは老いたユダヤ教のラビだった。彼はGolemにChavaという名を与えて世話をする。知性と徳があるChavaに好意を抱く老ラビだが、Golemの本質を知る彼は、Chavaを破壊すべきだということも知っていた。

いっぽう、シリア人のブリキ職人の家で蘇ったJinniのAhmedは職人の弟子として働き始めるが、火の存在であるJinniは、奔放な性格を抑えることができない。夜ごとニューヨーク市を徘徊し、トラブルを引き起こす。そうしているうちに出会ったのが、GolemのChavaだった。瞬時に互いが人間ではないことを察した二人だが、宗教が異なるために相手が何なのかを推測することができない。アラビア神話とユダヤ教、火と土、と異なる性質のふたりは衝突を繰り返す。だが、なぜか離れられず、深い部分で理解しあうようになる。

 

Golemを作った呪術師の話、Jinniが人間の姿で囚われるようになったいきさつなど、いくつもの登場人物の逸話が入り込むので、最初のうちは混乱するかもしれない。だが、読み進めるにつれ、なぜそれらのストーリーが必要だったのかがわかってくる。

シリアの砂漠、19世紀のニューヨーク市が幻想的な美しい文章で描かれているだけでなく、宗教、神、輪廻転生、善と悪、運命と個人の選択…といった興味深いテーマに心惹かれる。また、運命に翻弄される二人の愛情は静かにロマンチックである。

多くのストーリーが紹介されるので、最初は混乱するかもしれないが、ストーリーそのものは理解しやすいので「最上級レベル」ではなく、「上級レベル」にした。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中