ゴーストストーリーが混じったノスタルジックなキングのミステリ『Joyland』

著者:Stephen King

ペーパーバック: 288ページ

出版社: Hard Case Crime

ISBN-10: 1781162646

発売日: 2013/6/4

適正年齢:PG15(高校生以上)、描写は露骨ではないが性的コンテンツあり

難易度:上級レベル(英語ネイティブの普通レベル)

ジャンル:ミステリ/ホラー

キーワード:青春物語、ロマンス、涙ぐむ、スリルがある、ノスタルジック

 


 

初老の男Devin Jonesは、ノースカロライナで過ごした21歳の夏を振り返る。ニューハンプシャー大学の学生だったDevには相思相愛のガールフレンドがいたが、彼女の提案で大学の夏休みを別々の場所で過ごすことになる。ノースカロライナにある遊園地(カーニバル)の「Joyland」で職を得たDevは、面接した占い師からガールフレンドが彼の過去の存在であり、未来に2人の子どもに会うと告げられる。ひとりは赤い帽子をかぶった少女で、もうひとりは犬を連れた少年だという。そして、ひとりは救えるが、もうひとりは救うことができないと。


ボストンにいるガールフレンドに裏切られて失恋したDevはしばらく食事もできないほど落ち込むが、犬のぬいぐるみを着たショーで子どもたちの人気者になり、偶然に何人かの命を救い、次第にJoylandに自分の居場所をみつけてゆく。Joylandには本物の幽霊が出ると噂される幽霊屋敷の乗り物があった。数年前、少女が乗り物の途中で喉を切られて殺されるという事件があったのだが、彼女と一緒に乗った犯人の男はいまだにみつかっていなかった。 Devは仲良くなった同僚と一緒に犯人を突き止めようとする。

夏が終わり、友人たちは大学に戻っていったが、Devは休学してJoylandで働き続けることにする。そして、浜辺で車いすに乗った少年と犬に出会う。Devは彼らとすぐに仲良くなったが、美人の母親はよそよそしい態度を取る。

外れ者や正体不明の占い師がいた1970年代の遊園地の怪しい雰囲気が楽しく、幽霊の逸話もキングの初期の作品を連想させてノスタルジックである。21歳の青年Devの純情さもスィートで、悲しい出会いもあるが、読後感が良い作品である。

先が読めてしまうので驚きがないのが個人的には残念だったが、(ふだん平気で1000ページの超長編を書くキングにしては珍しく)300ページ以下だというのは原書でキングを読みたい日本人ファンには嬉しいだろう。短いけれども、キングのエッセンスはしっかり詰まっているので。

最初のうちJoylandで働く者の会話が理解できなくて困るかもしれないが、主人公のDevですら理解できない場合が多いので気にせず読み続ければよいだろう。

また、本書は40〜50年代のパルプフィクションのようなペーパーバックのデザインで犯罪小説を刊行するHard Case Crimeの第二作である。

 

 

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