言葉を1000語以上知っている天才ボーダーコリーの実話『Chaser』

著者:
John W Pilley, Hilary Hinzmann(ゴーストライター)

ハードカバー: 256ページ(キンドルあり)

出版社: Houghton Mifflin Harcourt

ISBN-10: 0544102576

発売日: 2013/10/29

適正年齢:PG12(中学生以上)

難易度:中級レベル(高校英語をマスターしたレベル)、難しい単語も出て来るが、文章はシンプル

ジャンル:回想記

キーワード:犬(ボーダーコリー)、驚異的な事象、動物心理、動物トレーニング


 

ナンタケット島にある別荘にゆくたび、私は家からビーチまで5マイル(約8.4km)のジョギングを楽しむ。道中で多くの犬と飼い主に会い、立ち止まって彼らに挨拶することもある。

去年の秋、ボーダーコリー2匹を散歩させている中年女性と出会い、犬に挨拶をしながら話を聞いたところ、ボーダーコリー専用レスキューから引き取ってきたばかりだという。たしかに落ち着きがない感じで、1匹は挨拶するが、もう1匹は知らん顔をしている。「ほんとうは1匹でも大変なのだけれど2匹引き取ることにしたのは、前の飼い主から虐待されていた彼らが心を癒すためにお互いを必要としていたから」だという。


ボーダーコリーは、Bebeなど映画にもよく登場する代表的な牧羊犬の一種である。農場で羊を囲い込んで移動させる仕事のために長年ブリードされてきたので、それが生まれつきの性質になっている。賢いが、hyper active(超活動的)であることでも知られ、ボーダーコリーをよく理解していない者が飼うのは困難である。だが、見かけの愛らしさにつられて家庭用のペットとして入手する者が増え、手に負えなくなった飼い主が虐待する悲しい例が増えているのだ。

ボーダーコリー専用レスキューは、保護しているボーダーコリーを希望者に簡単に手渡したりはしない。希望者にボーダーコリーを飼った経験があり、家に高い柵で囲まれた広い庭がなければ相談にも応じない。面接で飼い主の心身の健康もチェックされる。厳しいチェックに合格した人だけが引き取ることができるのだ。

私がナンタケット島で出会った女性は「犬の幸せ」を最優先しているという印象だった。ボーダーコリーが何を欲していて、それを満足させることが大変だと知った上で、引き受ける覚悟をしたのだった。「子どもが巣立ったので、すべてのエネルギーを注いでやることができます」と彼女は語った。

その後しばらくビーチへのジョギングができず、同じ時間帯に走ることができたのが今年の春だった。立ち止まって犬たちに挨拶したところ、昨年私を無視していた1匹もしっぽを振って挨拶に来た。どちらからも、安心と幸福感が滲み出ていたので「ずいぶん変わりましたね。あなたが、ほんとうに素晴らしい愛情を与えたのが分かります」と話した。

本を紹介する前になぜこういう話をするのかというと、天才犬Chaserに魅了されて簡単にボーダーコリーをペットショップで購入しないで欲しいからだ。Chaserが素晴らしいのは、飼い主がChaserの幸福を最優先して育てたからなのだ。

 

私がChaserのことを知ったのは、NOVA scienceNOWの『How Smart Are Dogs?』だった(下記のビデオで、Chaserが登場するのは、1:50あたりから)。

犬が1000以上の単語を覚えているだけでも驚異的だが、トレーニングで得た能力だけでなく、知らない単語を消去法で推理して当てる(ビデオの10:45あたりから)という独創的思考を犬ができるということに驚いた。

Chaserの飼い主John W Pilleyは長年大学で教鞭をとっていた心理学者である。彼がどのようにしてChaserに出会い、彼女の潜在能力を察知し、トレーニングしたのか非常に興味があった。それを説明する本書のARCをいただけるということで、喜んで飛びついたのである。

私の疑問にすべて答えてくれたという点で、本書にはとても満足した。

Pilleyにボーダーコリーの知性を教えたのは、Chaserの前に飼っていたボーダーコリーとジャーマンシェパードの混血種Yashaだった。YashaはPilleyの講義の助手も務めたほどの賢い犬で、彼が15歳で亡くなったとき、Pilleyは「もう二度と犬は飼わない」と決めたのである。何年も犬なしに過ごしていたPilleyだが、妻や娘たちのすすめで知人の農場で生まれたボーダーコリーの子犬を入手し、彼女の潜在的な知性を最も引き出せるように育てたのである。

私が特にすばらしいと思ったのは、「愛情」をベースにしたPilleyの教育の姿勢である。子犬の前では決して大声を上げないこととか、愛情のreward(ご褒美)で良い行いを強化すること、すべてのトレーニングはChaserの幸福のためであることなど、子育てと重なることばかりなのだ。

日本のペットショップに売られている犬を見て、怒りで涙が出そうになったことがある。

飼育が難しい種類の犬が、「売れる」という理由で選択され、売られている。

悪気なく、「可愛いから」という理由だけで衝動的に買う人がいる(だから、残酷なブリーディングも行われている)。

1日中羊を追いかけて囲い込まないと幸せになれないシープドッグが、そりを引いて走るのが最大の幸福であるハスキーが、毎日小さなアパートに閉じ込めたら気が狂いそうになって当たり前だ。

本書を読むと、「賢い犬(子ども?)を育てる方法」を学べるだけでなく、犬の性質に合わせて育てることの大変さや重要さも分かるだろう。

 

 

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