信頼していた夫の秘密を知ってしまった妻たちの悩み『The Husband’s Secret』

著者:Liane Moriarty

ペーパーバック: 448ページ

出版社: Penguin

ISBN-10: 1405911662

発売日: 2013/8/29

適正年齢:R(成人向け)

難易度:上級レベル(だが、入り込みやすいし、理解しやすい)

ジャンル:現代文学/心理スリラー/チックリット(女性小説)

キーワード:夫婦関係、秘密、人間心理、ユーモア、ラブロマンス


 

オーストラリアのシドニー郊外に住むCeciliaは、自他ともに認める完璧な主婦である。ハンサムな夫と3人の美しい娘の要求を満たし、家を塵ひとつない状態に保ち、学校のボランティアで活躍し、困った人がいればすぐに世話にかけつけ、タッパーウエアの販売では国内でもトップレベルというスーパーウーマンだ。そんな自分と家族をCeciliaはとても誇りに思っていた。


ある日、Ceciliaは夫のJohn-Paulが保管していた手紙を偶然に見つける。Cecilia宛てのその手紙には、彼が死んだときのみ開封するように書かれていた。開封するべきかどうか悩んだCeciliaは、いったんは開けないことを決意するが、夫の反応があまりにも奇妙だったので開けてしまう。夫が抱えていた秘密を知ってしまったCeciliaは、それ以前の生活に戻れないことを深く後悔する。

かつて同じ町に住んでいたTessは、幼いときから双子の姉妹のように仲良しだった従妹のFelicityと一緒にメルボルンに移住し、そこで知り合った夫のWillと結婚して3人で広告エージェンシーを経営していた。結婚生活に満足していたTessは、夫とFelicityの二人から「恋におちてしまった」と告白されて耳を疑う。しかもTessに悪いと思って肉体的な関係を持たないように耐えているのだという。心から愛していた人々からの裏切りに傷ついたTessは、二人を残して6歳の息子と一緒に母が住む実家に戻る。息子を転入させたカトリック小学校の体育の教師Connorは驚いたことにTessの昔の恋人で、まだ彼女に未練を残しているようだ。

だが、その学校の事務長の Rachelは、自分の娘を殺したのがConnorだと密かに信じていた。

著者のLiane Moriaryは、オーストラリアを代表するチックリット(chicklit、女性向け小説)作家だが、この作品はチックリットを超えた心理スリラーや人間ドラマの要素があり、「文芸小説」として十分尊敬に値する出来である。

Cecilia、Tess、Rachelの3人の女性が抱く驚き、疑惑、憎しみ、恨み、自己満足と自己嫌悪の心理がとてもリアリスティックに描かれており、深刻なテーマが含まれているのに、ユーモアもある。気づいたらすっかり彼女たちの問題に引き込まれていて、「次にどうなるのか?」と気になって途中で止めることができなくなる本だ。

著者は女性に人気がある作家だが、男性読者も女性の心理を覗き込むスリルが味わえて、存分に楽しめることだろう。

単語や表現にやや難しい部分があるので上級レベルにしたが、すんなりと入り込めて、理解しやすい小説である。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

信頼していた夫の秘密を知ってしまった妻たちの悩み『The Husband’s Secret』」への2件のフィードバック

  1. こんにちは。由佳里さんのblogでお見かけして、読み始めた”Husband’s Secret”にハマってしまいました。
    後半から急に面白くなり、残り50ページくらいですが、読み終えるのが寂しいです。
    オーストラリアの小説を読むのは、これが初めてでしたが、メルボルンのような大都市の白人社会に、カトリックの文化(罪の意識など・・・)がこんなに濃く浸透しているということが、新鮮な発見でした。
    これからも、ブログ記事とTwitter、楽しみにしています。

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  2. Yukiさん、
    この本、想像していたのと中身がどんどん変わってゆくと思いませんか?その意外さも面白かったです。
    こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。

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