親を選べない子供たちの苦悩と癒やしをリアルに描いたYAの傑作『Reality Boy』

著者:A. S. King

ハードカバー: 368ページ

出版社: Little, Brown Books for Young Readers

ISBN-10: 0316222704

発売日: 2013/10/22

適正年齢:PG15(高校生以上)、全体を通して性行為に関するテーマがあるが、詳細な描写はない。

難易度:中級レベル(罵り言葉やスラングなどが多い。基本的には平易な英語。入り込みやすい)

ジャンル:YA(ヤングアダルト)、青春小説、文芸小説

キーワード:リアリティ番組、子供の心理的虐待、親子関係、心の傷と癒やし、成長物語、風刺

 

5歳のときにリアリティ番組に登場したGeraldは、16歳になった今でもその後遺症をひきずっている。

Geraldは生まれたときから6歳年上の姉Tashaに虐待されていたが、その姉だけを溺愛する自己中心的な母により、リアリティ番組で全米で最も悪名高い問題児に仕立てられてしまった。虐待する姉と、その虐待から守ってくれない両親への怒りを、いたるところでウンチするという行動で表現していたのだが、それがテレビでは大いにウケたのだ。そのために、Geraldは高校で「crapper(ウンチをする奴)」と呼ばれて虐めを受けている。


未だに解決していない家庭問題と、蓄積した過去の憤りを抱え込んでいるGeraldは、Anger management(怒りをコントロールするためのカウンセリング)に通っているが、自分でも、いつかその怒りを爆発させて刑務所に行くだろうと思い込んでいる。アルバイト先に気になる少女がいたが、カウンセリングで恋愛を禁じられているためにGeraldは彼女を避けてきた。ところが、その少女は彼のことが好きらしいのだ。けれども、その少女も家庭の問題を抱えていた。

 

ジャンル別 洋書ベスト500』に載せたPLEASE IGNORE VERA DIETZもそうだが、A.S.Kingは流行のYA本に欠けているティーンのリアルな心情を描いている。親の犠牲になった子供たちが落ち込んでしまった現在の泥沼と、彼が実際にはその泥沼を這い出してまともな人生を歩みたいと思っていることがきちんと描かれているのにも好感が抱ける。

本書で特に良かったのは、怒りの爆弾を抱えたGeraldの実直さである。同じように家庭の問題を抱えている少女Hannahの理不尽な行動に対しても、 簡単に関係を投げ出したりせず、自分の怒りを自覚したうえで誠実に対応してゆく。その努力により、彼は精神的に成熟するのである。それを読んでゆくうちに、最初に読者が抱いたはずのGeraldへの誤解が、著者がわざと与えた表層的なイメージなのだと分かる。

リアリティ番組は、アメリカに蔓延している困った現象だが、どの国でも同様の社会問題があるだろう。そして、親を選べない子供の苦悩も。そういった意味で、ティーンだけでなく、多くの読者の共感を呼ぶ本ではないかと思う。

罵り言葉などが嫌いな人にはおすすめできないが、来年のプリンツ賞の候補作になることが予想される優れた作品だ。

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