エイリアンの視点で人間性の素晴らしさを再認識できる心温まるSF『The Humans』

著者:Matt Haig

ハードカバー: 304ページ

出版社: Simon & Schuster

ISBN-10: 1476727910

発売日: 2013/7/2

適正年齢:PG15(高校生以上)詳細な描写はないが、性的シーンと話題あり

難易度:中級レベル(数学や科学に関する難しい表現は出てくるが、わからなくて当然のシチュエーションなので気にせずに読める)

ジャンル:SF/現代小説

キーワード:エイリアン、数学(リーマン予想、素数)、人間関係、愛情、ユーモア、心温まる

ケンブリッジ大学の数学教授のAndrew Martinが、数学における最も重要な未解決問題であるリーマン予想をついに解いた。この問題を解くことで、人類の知識と技術は大きく発展することが予測される。だが、人類は知識と技術を侵略と殺戮に使ってきた。こんな本質を持つ人類が地球外に侵略をするようになると、宇宙全体の安全が脅かされる。そこで、危険な未来の芽を摘み取るために、遠い惑星からエイリアンが訪れた。

リーマン予想の知識を完全に拭い取る使命を持って地球を訪問したエイリアンは、Andrew Martinを殺害して彼にとって変わる。彼のコンピュータから情報を削除するだけでなく、予測を説いた後に接触した人物をすべて抹殺するのが彼の使命だった。

下はネタバレがあるので白文字にした。読みたい方は、カーソルで範囲を指定して読んでいただきたい。

だが、エイリアンのAndrewは、予期していなかった障壁にぶつかる。殺害しなければならない対象にしだいに感情移入するようになってしまったのだ。

見かけはMartin教授になりきっているが、人間の「しきたり」を知らないエイリアンのAndrewがおかす滑稽な失敗には大いに笑える。だが、物語は次第にしんみりした雰囲気になる。そして、犬と心をかよわせ、Emily Dickinsonの詩を愛してしまうエイリアンの視点に、読者は人間性の素晴らしさを再認識させられる。

驚くような展開はないが、それでも「読んでよかった!」と思わせてくれる、暖かい作品である。エイリアンが出てくるSFだが、SFというよりも普通の現代小説のようなので、読者を選ばない。

知的に発達しているエイリアンの台詞はわざと難しくしてあるが、その部分以外は簡単で読みやすい。また、ページ数も少ないので中級レベルの方にもおすすめ。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

エイリアンの視点で人間性の素晴らしさを再認識できる心温まるSF『The Humans』」への1件のフィードバック

  1. リーマン予想の解明を抹消する任務を帯びた異星人が、抹消した人物になりきる事で、事もあろうに限りある人間の素晴らしさに開眼すると云う設定、又それに到る経緯が意外で面白い。解いた教授を抹消しても、機が熟していれば、何処かの誰かが、いずれ解明する等々と云う戯言が頭に浮かぶものの、下降線にあった展開が少し明るくなるラストに、生きていれば何か良いことあるさと云う、ほのぼのとした読後感を感じました。

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