アメリカ メイン州を舞台にした新コージーミステリ『Clammed Up』

著者:Barbara Ross

マスマーケット: 378ページ

出版社: Kensington Pub Corp (Mm)

ISBN-10: 0758286856

発売日: 2013/9/3

適正年齢:PG12(中学生以上。性的表現はキス程度)

難易度:中級レベル(コージーミステリなので簡単)

ジャンル:コージーミステリ

キーワード:メイン州、New England clambake(ニューイングランド式クラムベイク)、殺人、ロマンス

賞:アガサ賞候補(現時点ではまだ決定していない)

 

 

New_England_clam_bake

ニューイングランド式クラムベイク(ウィキペディアより)

舞台は、アメリカ東北部「ニューイングランド地方(New England)」最北端のメイン州湾岸沿いの町。

メイン州の夏は短いが、シーズン中は美しい海岸沿いの風景とロブスターやクラムといったニューイングランド名産物のシーフードを求める観光客で賑わう。

主人公Juliaの父が始めた「Snowden Family Clambake Company」は、観光客に船で景観を楽しませた後、母の家族が3代にわたって所有している小さな島に連れて行き、そこで伝統的なClambakeをするツアーを提供している。ホテル、漁業、アルバイトでの収入…など、Juliaだけでなく町にとって重要な産業でもある。

ところが、父が亡くなり、妹と妹の伴侶が事業をついでから経営は泥沼に陥った。大学進学で町を離れ、ニューヨーク市の投資会社で活躍していたJuliaは、妹から助けを求める電話を受けて故郷に戻った。


銀行からの差し押さえを逃れるために新しいローンの交渉をし、結婚式のケータリングで新しいシーズンを始めたときに、島で殺人が起きた。もちろん観光客を 連れてゆくことはできないから営業停止である。銀行と交渉したときに「天候による営業不可能な日数」として5日の余裕を設けていたが、その5日を費やして しまいそうだ。

銀行からの執拗な催促と母親が家族から受け継いだ島を失うストレスに耐えながら、Juliaは自分で犯人を見つけようと思う。

Screen Shot 2014-02-28 at 6.20.15 AM

メイン州の位置(ウィキペディアより)

 

著者はこの作品でデビューした新人で、この作品は、コージーミステリを対象にした「アガサ賞」の候補になっている。コージーミステリだから、気分が悪くなるような描写もないし、セックスシーンもない。とてもクリーンな作品である。

Juliaは30歳という年齢にしてはスレていなくて好感が抱けるヒロインである。また、コージーミステリでは重要な脇役たちもメイン州らしくていい。また、ニューイングランド式チャウダーやブルーベリーのデザート(grunt)など、本書に登場する食べ物のレシピが最後に載っているのも楽しい。

私が住んでいるボストン郊外はニューイングランド地方に属しているので、似ているけれども微妙に違うところも面白かった。メインは上の地図のように北で、カナダのケベック州が近い。だから、本書のようにケベックから移住している人もいる。ケベックの公用語はフランス語なので、それも知っておくと本書の登場人物について分かりやすいかと思う。

本格派ミステリに比べると満足感が薄いが、それは私の好みにすぎない。コージーミステリが好きな人は、コージーなところが好きなのだから。その点では良い作品だと思うし、これからファンがついてゆくだろう。

ほのかなロマンスはあるが、この作品ではそれが一番弱い部分かもしれない。

アガサ賞を含む推理小説の重要な賞については、拙著『ジャンル別 洋書ベスト500』をご参照くださいませ。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

アメリカ メイン州を舞台にした新コージーミステリ『Clammed Up』」への2件のフィードバック

  1. 渡辺さん、はじめまして。
    イギリスで教育に携わる者です。
    メイン州には研究中に行った事があり、
    この記事を読んで、当時の事がよみがえりました。
    良い本をご紹介されているんですね。
    またお邪魔します。
    ますますのご活躍を祈念しております。

    いいね

  2. Shumiさま
    忙しくてしばらくブログをチェックしていなかったもので、コメントをすっかり見落としていました。
    本当に申し訳ありません。
    私はロンドンに住んでいたことがあるので、懐かしいです!
    これからもどうぞよろしくお願いいたします。

    いいね

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中