美しい感動作になったThe Magicians三部作のフィナーレ The Magician’s Land

著者:Lev Grossman
ハードカバー: 416ページ
出版社: Viking Adult
ISBN-10: 0670015679
発売日: 2014/8/5
適正年齡:PG15+(この完結編に関しては高校生からOK.最初の二部は成人向け)
難易度:上級レベル(ファンタジーに慣れていない人には難解だと思う)
ジャンル:ファンタジー(第一巻はホラーに入れたが、本作品に限ってはファンタジー)
キーワード:魔法、魔術師、Narnia, The Lord of the Rings, Harry Potter

ジャンル別 洋書ベスト500』のひとつに選び、ブログでもご紹介した『The Magicians』三部作の完結編です。
まだ読んでいない方は、最初の二冊についての説明をまずお読みください。

6月に著者Grossmanに会って直接ARCにサインしてもらった(嬉しかったのでくだらないことをクダクダ言いすぎて反省)というのに発売日の今日まで読了しなかったのには、忙しかっただけでなく、不安があったからです。

というのは、最初の二冊がけっこう残酷で、しかも主人公たちがまったく同情の余地のないナルシストでエゴイストばかり。Grossmanが作り上げた魔法の世界と魔術のリアリズムに惹かれて読み続けたのですが、感情移入できる登場人物がいないのは辛いものです。


ネタバレになるので言えないのですが、ひとりだけ気に入った登場人物がいたのですが、とある悲劇で消えてしまい、それも不満でいたのでした。ちょっとだけ希望を残していたのですが、いったん読んでしまうともう勝手に希望を持つこともできません。だから、ずっとためらっていたのです。

でも、心配無用でした。
この完結編は、私が望んだよりも、希望に満ちた、美しいものだったのです

これを読んで、「なるほど主人公は成長する必要があったのだ」と納得しました。
よくあるYAファンタジーでは、ヒーローやヒロインが十六歳そこそこで自分を犠牲にして世界を救おうとします。でも、思春期の脳はそこまで成熟していません。
自己中心的で、身勝手で、周囲の人を傷つけ、目の前にある大切な愛を壊します。
The Magician's Landでは、30歳になったQuentinがようやくそれに気付き、異なる生き方をしていきます。そこが感動的なのです。

Quentinは童話やファンタジーを読んで育った子なので、皆さんがご存知の作品のパロディ的なところも沢山出てきます。登場人物たちもそういう話をします。
それも、ファンタジーファンには楽しいところです。

最初の二巻は暗いし、セックスもバイオレンスも「成人向け」ですが、完結編のこの作品は、ぐっと落ち着いてマイルドになっています。Quentinと同時に著者のGrossmanも成長して、世界の見方が変わったのかもしれません。彼が初めて小説を書いたときのことを振り返る率直なエッセイでも「成長」を感じます。

まだこの三部作を試していない方は、ほっとして読み終えることを約束しますので、最初から試してみてください。

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