親の病気で崩壊する家族と子どもの心理を静かにしっかりと描いた児童書『Nest』

著者:Esther Ehrlich
ハードカバー: 336ページ
出版社: Wendy Lamb Books
ISBN-10: 0385386079
発売日: 2014/9/9
適正年齡:PG10(小学校4年生から中学生対象)
難易度:中級レベル(Lexile Measure: 830L)
ジャンル:児童書
キーワード:家族関係、友情、成長、親の病気、子どもの心理

マサチューセッツ州のケープコッドに住んでいる11歳の少女Naomiは、家のすぐそばにある沼地を住処にする野鳥が大好きで、家族から「Chirp(鳥の鳴き声)」と呼ばれている。精神科医の父とダンサーの母、そして二つ年上の姉Rachelに囲まれてのんびりと育ったChirpの世界が、1972年の夏にすっかり変わってしまう。
Chirpが大好きなダンサーの母親が、Multiple Sclerosis(多発性硬化症、MS)になり、深いうつに陥って病院に入院してしまったのだ。


自分自身も悲しみに打ちひしがれ、動揺しているChirpの父親は、妻の難病に対してプロの精神科医として対応しようとする。けれども、それがかえって娘たちを心理的に押しやり、孤立させてしまう。Naomiの救いはケープコッドの自然と隣の家に住むJoeyの友情だけれど、自分ではどうにもならない出来事のせいでJoeyを怒らせてしまい、友情も失ってしまう。

 

親が病気になったときの子どもの心理、予期せぬ悲劇のためにそれまで幸せだった家庭が崩壊寸前になる状態、そして、それが回復される過程をシンプルで美しい文章で描いている。

精神科医の父親が自分自身や家族の問題を解決できずに失望している様子、親に好かれようとして良い子でいた思春期の姉の変化、助けが必要なのに、それぞれが自分のことで精一杯なので忘れ去られているChirpの寂しさと怒り、理解がない学校の教師の言動などが、とてもリアルだ。

テレビや雑誌などでは、親の病気に対して果敢に耐えたり、健康なほうの親の面倒までみたりする子どもの美談が有名になる。こういった「美談」を仕立てあげて子どもに重い責任を押し付け、追い詰める社会の風潮に、私は常に憤りを覚えている。

『Nest』は、良い子のChirpの苦しみを、静かながらにしっかりと描いたとても良い作品だ。美談ではなく、こういう本を読んでほしいと思う。

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