Intelに勤務しながらAmazonを利用してファンタジー作家になったビジネスマンの三部作『Muirwood』

著者:Jeff Wheeler
ペーパーバック: 287ページ
出版社: 47North(アマゾンのSF/ファンタジー部門の出版ブランド)
ISBN-10: 1612187005
発売日: 2013/1/15(三部作の一部)
適正年齡:PG15(高校生以上。性に関する話題はよく出てくるけれど、描写はない)
難易度:中級〜上級(ファンタジーなので難しい単語や表現が出てくるけれど、このジャンルに慣れている人であればスイスイと読める内容)
ジャンル:ファンタジー/宗教小説(モルモン教)/ロマンス/YA(ヤングアダルト)
キーワード:倫理、精霊(神)、善と悪、伝説、魔法、魔術

 

Muirwoodの世界は、Mediumと呼ばれる精霊のような存在とそれらが人間に与える魔力によって微妙に操られている。その魔力を操るMastonになるためにはAbby(大修道院、大寺院)の学校で修行して厳しいテストを受けなければならない。

厨房の下働きとして育ったLiaには生まれつきの魔力があるが、“wretched”と呼ばれる孤児の彼女にはその修業を受ける権利がない。読み書きを覚えたいLiaが何度AbbyのAldermaston(修道院長)に交渉しても、拒否される。


ある日、謎の男が大怪我をおった若者Colvinを台所に連れてきて、彼が戻るまでLiaに隠してくれるよう頼む。ColvinはLiaの献身的な介護に敵意しか示さないが、残忍な王が彼を追っていると知ったLiaは自分の安全を犠牲にして逃亡を助ける。

どんなに嫌なことがあっても、MuirwoodのAbbyはLiaにとって自分の家であり、Aldermastonは父のような存在だった。家族と家を捨てて自分に対して敵意しか抱いていないColvinを助ける旅に出ることになったLiaは後悔する。けれども、Liaが関わるようになったのは偶然のことではなく、Mediumの深い意図があったのだ。それには、彼女の出生の秘密も絡んでいるようだ。

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インテルで勤務しながら書いた著者のファンタジー三部作がアマゾンのトップセラーになり、今年インテルを引退してプロの作家になったという逸話を読んで興味を抱いていた。実験的にはじめたKindle Unlimitedに含まれていたので、私も試しに読んでみることにした。

ファンタジーの中でも伝説や魔術が好きな人にはしっくりくる雰囲気で、主人公の出生の謎やMuirwoodの不気味な雰囲気など、読者を引き込む要素がたっぷりだ。アクションも多く、ページターナーで、一部を読んだら次の二部にもすぐ手を出したくなるだろう。

だが、宗教色が強すぎるのがMuirwood三部作の最大の欠陥だ。
著者のJeff Wheelerはモルモン教徒(The Church of Jesus Christ of Latter-day Saints:the LDS Church ) である。SF・ファンタジーのジャンルには、モルモン教徒の作家がとても多く(Brandon SandersonStephenie MeyerOrson Scott Cardなど)、知らない人は多分気付かないだろうが、微妙に宗教が反映している。

宗教が絡んでいても、ファンタジーのプロットや世界観を大きく歪めないかぎりは構わないと私は思っている。だが、このMuirwoodはだんだん宗教の「説教臭さ」が出てきて、特に最終巻がいけない。神の意図ですべてが決まるのであれば、人間が生まれてきて悩んで生きる意味がないではないか。主人公が苦しんで判断を下す意味もないし、読者がクエストを読む意味すらない。

もうひとつの問題は女性観である。せっかく知的で魅力的な女性主人公を作っておきながら、イマイチ魅力に欠ける男性メインキャラクターに尽くす存在にしてしまうのが気に入らない。また、「女性の性」を徹底的な悪として描いているのも、多くの女性読者の反感を買っていたようだ。

このような問題はあるが、ページターナーを書く能力はある作家だとは思う。Wheelerの作品を出版している47NorthはAmazon.comの出版ブランドだが、Amazonはちゃんとオーディオブックも作っている。しかも、なかなか上出来のオーディオブックだ。Amazonがそこまでやるようになったのには感心した。Wheelerが今後Amazonを離れて別の出版社に移る力を発揮するのか、それともAmazonだけでも作家としてやっていけるのか注目したいところだ。

Muirwood2部

 

Muirwood3部

 

 

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