Harper Leeが58年前に書いたGo Set a Watchman の刊行は、本当に作者が望んだことなのか?

Harper Leeと言えば、誰もが知る『To Kill a Mockingbird』の作者である。

この名作の後は一作も書かず、ずっとスポットライトを避けてきた有名な「隠匿者」である。

そのLeeの「新作」が今年7月に発売されることが発表され、いきなりAmazonのベストセラー1位になるほど期待を集めた。

「新作」と書いたが、実は新作ではない。また、To Kill a Mockingbirdの「続編」とよく説明されているが、『Go Set a Watchman』はそれよりも前に書かれたものだ。

「続編」と説明されているのは、主人公が大人になったScout Finchだからだ。Go Set a Watchmanでは、彼女が直面している個人的な問題や政治の問題について父のAtticusの意見を聴くためにニューヨークからアラバマを訪問する、という筋書きらしい(7/14の読後に修正。この部分ニュアンスが違う)。

この作品を読んだ編集者が、「幼いScoutの見解で、別の作品を書いたらどうか?」と提案し、それでできたのがTo Kill a Mockingbirdらしい。Go Set a Watchmanの原稿はその後失われたと思われていたが、2014年にLeeの弁護士が発見し、訂正を入れずオリジナルのままで刊行されることになった。真相は不明だが、そう説明されている。

だが、「もう作品は書かない。刊行しない」というスタンスを保ってきたHarper Leeと、彼女を守ってきた姉で弁護士のAlice Leeを知るメディアはこの展開に懐疑心を抱いている。

しかも、この「原稿発見」と「新刊の発売の決定」は、Harperが脳卒中を起こして視覚と聴覚に障害を持ち、姉のAliceが健康上の問題で新しい弁護士に仕事を引き継いでからのことである。

「今回の『続編』の刊行は、本当にHarper Leeの望むことなのか?」という疑問が生まれて当然だ。

Washington Postの記事でも、周囲の関係者が回答を避けている様子が見える。

本当にHarper Lee本人が望んで刊行された作品ならいいが、そうでないのなら、私は読まずにおこうと思うのである。

7/15日追記:どうやら本人が望んだものだということが判明。読んだ感想はこちら

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

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