幸福になるための習慣を身に付けるためには、まず己を知る必要がある。Better Than Before

著者:Gretchen Rubin
ハードカバー: 320ページ
出版社: Crown
ISBN-10: 0385348614
発売日: 2015/3/17
適正年齢:PG15(成人を対象にした本だが、高校生が読んでもためになる部分がある)
難易度:中級(シンプルな文章。受験英語で十分読めるはず)
ジャンル:自己啓発書/心理
キーワード:習慣、性格、自分の傾向、幸せ、健康

いきなり自分の話で申し訳ないのですが、拙著『どうせなら、楽しく生きよう 』で自己啓発書について書いています。

「やれば絶対にできる!」といった本の教えにしたがって真面目に努力しているのに、うまく行かず、「もうこれ以上努力なんかできない」「私はやはりダメな人間なのだ」と崩れ落ちてしまう人がけっこういます。そして、そんな心理状態の人を励ますつもりなのか、「努力なんかしなくてもいい」と諭すたぐいの自己啓発書もあります。私は、どちらも問題だと思ってきました。
じゃあ、どうすればいいのでしょうか?

Better Than Beforeの著者Rubinは、「幸せ」というのがごく個人的なものだということは承知のうえで、「人間は、わずかであっても自分が向上しているのを実感しているときに幸福感をおぼえる」と語ります。それゆえにこのタイトル「Better than Before」なのですが、「いかに向上するべきか」を語った本ではありません。そうではなくて、向上を容易にしてくれる「習慣」がテーマです。

人には毎日無意識に繰り返している「習慣」というものがあります。著者Rubinによると、なんと1日の行動の40%がそうだというのです。つまり、この習慣が現在の自分の個性であり、この習慣により将来が決まるわけです。

では、「悪い習慣をやめて、良い習慣を身に付ければよい」ということになります。そのノウハウを書いた本はこれまでにも沢山ありました。

でも、それらの自己啓発書に従って能力が向上し、仕事もできるようになり、幸せ度が高くなる人がいるいっぽうで、何も改善せずにかえって不幸になる人がいます。

「やる」と決めたらすぐに実行できる人と、「健康のためには甘いものはやめたほうがいい」と知りつつやめられない人、昔は陸上部で毎日文句も言わずに激しい練習をしていたのに今は何もやっていない人の違いは何なのでしょう? 意志の強さが違うだけなのでしょうか?

著者Gretchen Rubinは、これらの不可解な現象を疑問に思い、人の習慣についていろいろと調べました。

その結果Rubinがたどり着いたのは、人にはそれぞれに異なる性格、傾向があり、「すべての人にあうベストな対策はない」という結論です。

身長150cm体重40kgの女性と、身長185cm体重75kgの男性では同じ服が似合わないように、習慣についての姿勢にも変えられない個性があります。生まれつきの個性に合わせた対策を使わないと、良い習慣を身につけ、悪い習慣を捨てることはできないのです。

自分にあった対策を知るためには、まず自分を知る必要があります。Rubinはいろいろなタイプを紹介していますが、代表的なのが「期待に応える」という観点からの4つのタイプです。

ニューヨーク・タイムズ紙の記事で性格診断テストが紹介されていたのでご存知の方もあると思いますが、次のとおりです。

Upholders(約束を守るタイプ):他人からの期待と、自分自身の期待のどちらにも応える性格。

Questioners(疑問を抱くタイプ):他人からの期待に疑問を抱き、納得しなければ抗う性格。だが、自分で決めたことは守るし、継続できる。

Obligers(義務に応えるタイプ):他人からの期待を裏切ることができない性格だが、自分で決めたことを実行し、継続するのは苦手。

Rebels(抗うタイプ):外と内、どちらからの期待にも抗う性格。

私はQuestionerで、夫は(私が予想したとおり)Upholderでした。よくできたテストなので、英語ができる方は著者のサイトでのテストをぜひ試してみてください。

本書の特徴は、「人によって良い習慣の付け方は全然ちがう」ということを徹底的に書いているところです。上記のUpholderが楽に取り入れられる方法をRebelに押し付けたら、かえって強い抵抗にあってしまいます。Questionerは自分が納得したことなら守れますが、他人の期待には徹底的に抗います。Obligerはまったく逆です。

これらの性格のほかにも、悪い習慣をすっぱりとやめるほうがあっているAbstainerとちょっとだけ許すほうが長続きするModeratorでは、同じ対策を使うことはできません。かえって逆効果になってしまいます。

この本には、著者Gretchen、彼女の夫Jamie、1型糖尿病がある妹、その他多くの友人が出てきます。それを面倒に思う人がいるかもしれませんが、著者と友人家族とのやりとりを通じて読者に「私はこのタイプだなあ」、「私ならこのやり方では絶対にダメだわ」など考えさせてくれるのが良いところです。

彼女が結論のところで次のように書いていますが、ほんとうにそうだと思いました。

We can build habits only on the foundation of our own nature.

ふつうの「自己啓発書ファン」は、「改善策をまとめて具体的なステップを書いてくれ!」と苛立つ可能性がありますが、これまでの自己啓発書で習慣を変えられなかった人には目からウロコ的な発見がある良書です。

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