じわじわ不気味で読み応えがある児童書ホラー The Nest

著者:Kenneth Oppel (文)/Jon Klassen(イラスト)
ハードカバー: 256ページ
出版社: Simon & Schuster
ISBN-10: 148143232X
発売日: 2015/10/6
適正年齢:PG 8-12(小学校3年生から中学生向け)
難易度:中級(難しい表現もたまにあるが、文章は短くてシンプル)
ジャンル:児童書/ホラー/ゴシックサスペンス
キーワード:不安、恐れ、wasp(スズメバチ)、蜂の巣、おもちゃの電話

恥ずかしいから誰にも言わないけれど、Steveは闇が怖くて、夜中にリアルな悪夢を見てお母さんを呼ぶことがある。おまけに何でも心配になる癖があり、最近の不安の種は生まれたばかりの弟だ。

両親ははっきりとは言わないけれど、赤ん坊には先天性の障害があって生き延びないかもしれない。それに、手術で生き延びてもすっかり健康にはならないみたいだ。

病院通いで忙しい両親に取り残されたかたちのSteveと妹の周囲で不思議なことが起こり始める。

毎日無言電話がかかり、英語があまり達者ではない「刃物の磨屋」が現れ、Steveの夢の中に天使が現れて「赤ちゃんのことで、あなたたちを助けるためにやってきた」と告げる。

夢の中に天使が現れるのと同じころ、家の外にスズメバチが巣を作りはじめた。スズメバチに刺されてアレルギー反応を起こしたSteveは、病院で治療されて戻った後にまた夢を見る。Steveがずっと「天使」だと思っていたのは、実はススメバチの女王だったのだ。女王はSteveにある提案をする。

イラストが私の大好きなJon KlassenだからARCをいただいたのだが、読み始めて「ひょっとしれこれは、ホラーでは…」と苦笑。一つ前のブログ記事のように、この本も知らずに読み始めたら苦手なホラーだったのである。

周囲の馴染みあるものが別のものに変わるというのは、児童書の傑作Coralineがそうだったように、子供の読者にとってはとても怖いことだ。そういう意味で、このThe Nestはけっこう児童書にしては怖いほうじゃないかと思う。そして、小学校高学年から中学生の年代にとって「怖い本」は魅力的なのである。

でも、ホラーといえど児童書だから大人の読者にとってはさほど恐ろしくはない。ほどよくジワジワと不気味で面白いのではないかと思う。

主人公のSteveにOCD(Obsessive Compulsive Disorder/強迫性障害)があり、「人には何らかの障害や欠陥があり、完璧ではない」という悟りのようなものがあるのも読者へのメッセージとしていい。

多読用の洋書ばかりに飽きている大人の読者におすすめの本である。

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