「意外」を詰め込みすぎたのが残念だった心理スリラー Broken Promise

著者:Linwood Barclay
ハードカバー: 512ページ
出版社: NAL (2015/7/28)
ISBN-10: 0451472675
発売日: 2015/7/28
適正年齢:PG15(高校生以上)
難易度:中級+〜上級(日常用語でひかかるかもしれないが、ミステリ好きなら問題なく読める)
ジャンル:心理スリラー(ミステリ)
キーワード:家族の秘密、幼児誘拐、殺人、シングルファーザー

Davidは新聞記者として安定した生活をしていたが、妻を亡くし、新聞業界の不況のあおりをうけて記者としての仕事も失う。9歳の息子と一緒に故郷で両親との同居を始めたDavidは、母親の指図で赤ん坊を死産して以来精神的に不安定になっている年下の従妹Marlaを見舞うが、そこで彼女が他人の幼児の世話をしているのを見つける。Marlaは「天使がくれた。だからこの子は私のもの」と子供を手放そうとしない。

その男児の母親が殺害されたことが判明し、Marlaの罪が疑われるなか、Davidは新聞記者としてのスキルを駆使して事件の真相を突き止めようとする。そこで浮かんできたのは、暗い家族の秘密だった。

ベストセラーになった『No Time for Goodbye(失踪家族 )』『 To Close to Home(崩壊家族 )』の著者による最新心理スリラー。Barclayは父親の視点から家族の持つ秘密を浮き彫りにするミステリを得意とする作家で、今回も主人公は息子をひとりで育てるシングルファーザーで、好感が抱けるタイプである(ちょっと優柔不断すぎるが)。男性主人公とくらべて、Barclayの描く女性はたいていどこかが歪んでいる。このあたり、男性読者のほうが感情移入しやすいかもしれない。

心理スリラーとしては悪くないし、最後まで飽きずに読める”twists and turns”がある。しかし、意外な展開や秘密を詰め込みすぎて、小説としてまとまりが悪くなっているのが残念だ。また、一応中心になっている事件は解決するのだが、解決していないこともあり、次作以降に謎が引き継がれるようになっている。どうやら、新しいシリーズの第一巻ということらしい。それならもう少しDavidに魅力的になっていただきたい、というのが正直な感想である。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

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