ケルト民話を思わせるオーソドックスさが新鮮なファンタジー Dreamer’s Pool (Blackthorn and Grim #1)

著者:Juliet Marillier
ハードカバー: 448ページ
出版社: Roc
ISBN-10: 0451466993
発売日: 2014/11/4
適正年齢:PG15(性的なシーンもあるが、描写は露骨ではない)
難易度:中級+(ファンタジーや民話に慣れている読者なら簡単に理解できる英語)
ジャンル:ファンタジー(伝説、民話)/YAファンタジー
キーワード:ケルト、民話、伝説、fey(フェイ、妖精)、魔術、healer(治療師)、wise woman(女性賢者、治療師)

治療師のBlackthornは、残忍な首領Mathuinに背いた罪で投獄された。Mathuinの悪行を公聴会で訴える日を待って心身の拷問に耐えていたが、その寸前に自分が暗殺されることになっているという噂を耳にする。絶望しているBlackthornの前にfeyの貴族Conmaelが現れ、取引をもちかける。「Mathuinへの復讐はせず、この国を離れてDalriadaという国に行く。そして、誰かに助けを求められたら拒否せずに援助する」というものだ。しかもその期間は7年だという。

fayは信用できない存在だ。贈り物を受け取ると、必ず大きな代償がある。それに、Mathuinへの復讐を7年も待つなんてできない。Blackthornは反射的に断ろうとするが、死んでしまったら復讐はできないと思い直す。

Blackthornの逃亡を助け、彼女を守るために後を追ったのは、囚人や看守から頭の働きが悪いと馬鹿にされていた巨体のGrimだった。辛い過去と牢屋での酷い仕打ちで心を棘だらけにしているBlackthornはひとりきりになりたくて仕方がないのだが、Grimの孤独な心の叫びを察し、「助けを求められたら拒否しない」というConmaelとの約束を守るためにGrimの援助をしぶしぶ受け入れる。

いっぽう、Dalriadaでは国王の跡継ぎOrinが花嫁の到着を待っていた。DalriadaのWinterfallsを統治するOrinは誠実だが夢見心地の若者でもある。母が薦める花嫁候補Flidaisの肖像画に惹かれ、手紙のやりとりですっかり惚れ込んでいた。ところが、長旅の後でDalriadaに到着したFlidaisは、手紙から想像したような賢くて思いやりがある女性ではなかった。国を一緒に統治するパートナーとしてふさわしくないFlidaisとの避けられない結婚に苦悩するOrinは、難事件を解決したBlackthornの腕を信じて彼女に相談を持ちかける。

アメリカのYAファンタジーにはある一定のパターンがある。バンパイアものであれ、ディストピアものであれ、必ず主人公が恋で悩む。そこがまた重要な部分であり、読者はそれを期待して読んでいるところがある。

だが、そればかりというのは飽きる。もっと違うファンタジーがあっていいのではないかと思うのだが、出版社が売れそうなものばかりに力を入れるせいか、あまりバラエティがない。

本書は、アメリカのYAファンタジーとはまったく異なる作品である。
それもそのはず、本書の著者はニュージーランド生まれでオーストラリア在住の女性作家なのだ。また、ケルト系でもあるらしい(先祖がアイルランド、スコットランド、ウェールズあたりの民族)。

ファンタジーは元々は神話や伝説から誕生したもので、このDreamer’s Poolはその流れをくんでいるオーソドックスなタイプだ。主要人物のひとりはBlackthornと自称するもう若くはない女性で、マグマのように煮えたぎる怒りを抑えこんでいるために毒舌だ。そして、誰にも話せない残酷な過去を抱えているGrimは巨体と無口のせいで知的に劣っていると思われているが、実は非常に賢明だということがわかってくる。Grimは、なぜか牢獄にいるときからBlackthornを「Lady」と呼んで崇めており、最初面倒がっていたBlackthornはだんだん彼の忠実さと賢明さに友情を覚えてくる。こういう微妙な関係の二人が主人公のシリーズというのは面白い。

二人が解決した謎そのものはそう謎でもなく、神話や伝説を読んでいる人ならすぐ先が読める。けれども、物語の雰囲気と主要人物二人のキャラクターがいいので、続きも読みたくなる。オーソドックスだけれども、かえって新鮮なファンタジーシリーズだ。

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