アメリカで女性コメディアンの回想録がよく売れるのは……

夫の仕事に同行してカナダのケベック・シティまでドライブすることになった。運転手を務める夫のリクエストにこたえて選んだのが下記のオーディオブックである。

著者のAmy Poehlerは、たぶん日本ではサタデーナイトライブ(SNL)のヒラリー・クリントン役として知られている程度だろう。でも、アメリカでは押しも押されもしない有名コメディアンだ。先日ご紹介したAziz Ansariとテレビ番組で共演する女優であり、優秀な脚本家でもある。

本書は、Amyの生い立ちからスタンドアップコメディアンとしての貧乏生活を経てテレビで活躍するようになった経緯を綴る回想録だ。

ただ笑えるだけではなく、好きなことをやりぬく女性の凄みが感じられる良書だ。現在の成功に至るまでには長い下積み時代があったあったわけで、「成功した部分だけ見て真似ようとしても無駄だよ」という感じで若い読者を突き放すところもいい。アメリカにも「働く女性 vs 専業主婦」の戦いがあり、その愚かさを指摘する点でも拍手喝采だった。

オーディオブックを聴くまで知らなかったのだが、Amyの出身地はマサチューセッツ州バーリントンで私が住むレキシントン町のお隣なのだ。
AmyがSNLで共演したRachel Dratchや、インド系アメリカ人女性という珍しい若手コメディアンのMindy Calingもレキシントン町出身で、私の近所は女性コメディアンが大豊作ということになる。

次のRachelとMindyの本も、Amyの本同様にベストセラーだ。
他の有名人とは異なり、ゴーストライターなんか使わないのが彼女たちの素晴らしいところ。寝不足や自己不信に悩みつつも、ちゃんと自分で書いているからこそ面白い。

彼女たちの文章が面白いのは当然とも言える。
Amyはボストン・カレッジ、RachelとMindyはアイビーリーグのダートマス、といずれも全米トップレベルの大学で演劇やコメディ(Rachelは心理学も)を学び、論文や脚本を沢山書いてきたプロなのだから。

馬鹿になりきれる賢い女性コメディアンの代表格はなんといってもTina Fayだろう。バージニア大学で演劇と脚本を学び大学の賞も受賞した優秀な学生で、Amyとは下積み時代からの親友である。

彼女たちの回想録を読むと、「人前で馬鹿になりきる」のは、努力と経験で磨かれたプロの技術なのだと思い知らされる(まあ、そんな固いことを言わずにただ笑いながら読むほうがいいとは思うのだけれど)。

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