ニューヨークの高級レストラン業界の内側を描くThe Devil Wears Pradaのグルメ版的チックリット Food Whore

著者:Jessica Tom(新人)
ペーパーバック: 352 ページ
出版社: William Morrow Paperbacks
ISBN-10: 0062387006
発売日:2015/10/27
適正年齢:PG 15
難易度:中級+(文章そのものは非常にシンプル)
ジャンル:娯楽小説/Chick lit(女性小説)
キーワード:グルメ、ニューヨーク、レストラン評論家、料理家、ラブロマンス、ニューヨーク・タイムズ紙

イェール大学卒のTinaには大学時代から育ててきた野望があった。
ニューヨーク大学の大学院で食品ビジネスについて学び、有名な料理家Helen Lanskyのように料理本を出版するという夢だ。だが、そのためにはまずHelenのインターンになる必要がある。希望者はもちろん多い。競争を勝ち抜くため、TinaはHelenがかつてニューヨーク・タイムズ紙で評価してくれたレシピのクッキーを焼いてニューヨーク大学の特別イベントで待ち構えていた。

ところが、ニューヨーク・タイムズ紙の有名なレストラン評論家のMichael SaltzがTinaの計画を台無しにしてしまう。そして、TinaはHelenのインターンになれず、大学院から有名レストランのコート預かり係を与えられる。それを挫折とみなしていたTinaは、目の前に差し出された魅力的なチャンスに飛びついてしまう……。

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著者Jessica TomによるとFood Whoreとは「A person who will do anything for food.(食べ物のためなら何でもする人)」である。

The Devil Wears Pradaという本をご存知の人は多いと思うが、この刺激的なタイトルの本はそれを思い出させる小説だ。ファッション界も普通の人にとっては異様な世界だが、グルメ産業も突き詰めると異様度は高い。

特に、ニューヨークのマンハッタンの競争の熾烈さは世界一と言っていいだろう。
フランスでは「ミシュランの星をひとつ失うのではないか」という噂だけで悩んで自殺したシェフもいるが、マンハッタンではニューヨーク・タイムズ紙のレストランレビューが恐れられている。星を失うということは、名誉を失い、一晩に何千ドルも費やしてくれる上客を失うということであり、仕事も失いかねない。だから、覆面で来るレビュワーを毎晩恐れている。

料理評論家・レストラン評論家は、このように、食べ物を作り出すシェフの運命を動かす神のような存在だ。その神が人々を操ろうとしたら、どうなるのか?

Jessica TomのFood Whoreでは、そういったグルメ産業の裏側がとても面白い。著者そのものが主人公と似たような体験をしてきているグルメなので、高級レストランが作る食品の説明も楽しく(美味しく)、食べ物大好きな私にはThe Devil Wears Pradaよりも面白かった。

たぶん読者が首をかしげるのは、女性主人公が野心満々で自己中心的すぎるところだろう。むろん、この年代の成功を目指す男性なら普通の行動であり、そこを批判するわけではない。それに、女性の場合には普通の男性を超えるくらいでないと、マンハッタンの厳しいビジネスの世界では生き残れない。私が問題だと思ったのは、著者が主人公の度重なるbad choicesに対して甘すぎるところだ。

ところで、アメリカでは主人公Tinaのようにトップ大学を良い成績で卒業しても自動的に良い職業を得ることはできない。やはりコネのほうが重要なのだ。だから普通の家庭で育った者は、Tinaのようにものすごい努力と競争を続けなければならない。そういう意味では非常に現実的な小説であり、男性も楽しめるchick lit(女性小説)である(実際に、夫も「面白かった」と言っていた)。

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