静かながらパワフルな、ピューリッツァー賞受賞作家の新作 My Name Is Lucy Barton

著者:Elizabeth Strout
ハードカバー: 208ページ
出版社: Random House
ISBN-10: 1400067693
発売日: 2016/1/12
適正年齢:PG 15
難易度:上級レベル(難しい語彙はあるかもしれないが、スムーズに理解できる文章)
ジャンル:文芸小説/現代小説
キーワード:親子関係、家族関係、孤独、女性の生き方

Olive Kitteridgeでピューリッツァー賞を受賞したStroutの最新作で、今回も女性の人生を描いている。

今回の主人公は30代の若い母親Lucyで、簡単なはずの手術の後に原因不明の発熱を起こし、長期入院している。夫は他人の病に直面するのが苦手なタイプのようで、忙しさを理由に妻を訪問せず、幼い娘ふたりを病院に連れて来てくれるのは子守に雇った女性だ。

病院で孤独に横たわるLucyのもとに、何年も会っていない母親が現れる。
ベッドサイドから離れずに付きそう母とLucyはたわいない会話を交わし始めるが、ふたりが語らない部分に解決していない過去の強い感情が渦巻いている。

地方の小さな町の極貧の家庭で育ち、同級生からは「くさい (stinky)」と虐められ、親からは残酷な「躾け」をされたLucyは、辛い現実を忘れるために本を読み、極貧の環境をぬけ出すために猛勉強をして学費免除のスカラシップで大学に行き、知識階級出身の夫と出会って結婚した。

だが、そんな達成をして娘を誇りに思うどころか、両親は娘との縁を切ったのだった。
久々に会った母は、その理由を語るでもなく、謝るでもない。
そして、短編小説を有名な雑誌に発表したことをLucyが伝えると、意外な反応をする。

残酷な仕打ちをする父から守ってもらえず、優しくされたこともないLucyと母の複雑な関係は、たとえまったく同じなくても、多くの人々が身近に感じるものだろう。
だから、詳しく語られない行間の部分を、自分がためこんだ感情で埋めて胸がつまる。

この小説は、親子関係だけでなく、人間関係におけるすべての「judgement」と「loneliness」をテーマにしている。
私たちは、どんな関係においても、相手を勝手に評価し、裁く。その動機は、じつは自分を肯定するためのあがきだったりする。
本人にも自覚がない「裁きの動機」を他人が完全に理解することはできない。そして、裁きあう私たちは、相手を理解しようとしても孤独から抜け出すことはできない。

表層的には何も起こらない静かな小説だが、じつはとてもパワフルだ。

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