作者:Jennifer L. Nielsen
第一巻
ペーパーバック: 342ページ
出版社: Scholastic Trade (2013/02)
ISBN-10: 0545284147
発売日: 2013/02
適正年齢:PG 12(小学校高学年から中学生向け)
難易度:中級レベル(高校英語で100%理解できなくてもストーリーにはついていけるはず)
ジャンル:ファンタジー/冒険/児童書/YA(11歳から15歳程度向け)
キーワード:王国、王座争い、隣国との戦争、成長物語、リーダー、クエスト、ロマンス
国王、女王、長男の王子が暗殺された王国は、内戦の危機に直面していた。
国王には次男がいたのだが、4年前に隣国の海賊に殺害されており、王家の血をひく跡継ぎがいなくなる。この空白を利用して自分の勢力を拡大しようとする貴族は多く、そのひとりがConnerだ。
Connerは、「次男の王子はじつは生き延びていた」という設定で偽りの国王を仕立てあげ、自分が摂政として国を統治することを企んでいた。そこで、次男の王子によく似た孤児を4人誘拐し、短期間に必要な教育とトレーニングを与えることにしたのだが、いなくなった王子を演じられるのは1人だけだ。トレーニングが終了した後、Connerはこのうち1人だけを王子として選ぶことを少年たちに伝えた。
最初から競争を拒んだ少年があっさりと殺されたのを目撃した3人の少年は、逃げることも、拒否することもできず、唯一の生き残る道を選択した。だが、Sageという少年だけは、Connerに逆らい続ける……。
このThe False Princeの三部作は、アメリカの児童書分野では忘れられがちなカテゴリ「Mid-level(児童書とYAの中間で、小学校高学年から中学生が対象)」に属するファンタジーだ。ほんわりしたロマンスがあったとしても、露骨な性描写がないところが、高校生以上を対象としたYAファンタジーとは大きくことなる。ただし、ふつうの児童書よりも複雑なテーマを扱うし、死や暴力はタブーではない。
The False Princeにはミステリの要素もあり、一度読み始めたら、次どうなるのか知りたくて途中でやめたくなくなる。ハリー・ポッターやハンガーゲームと比べる人も多いようだが、共通点はあるものの、まったく異なる本だ。ハリー・ポッターほど暗くはないし、魔法も出てこない。また、生き残りをかけて少年同士が競うのだが、ハンガーゲームのように残虐なところには行かない。それよりも、冒険や戦いが面白い。
怒りや衝動が多いSageは、決して完璧ではないが、正義感はゆるがない。周囲の忠誠心をかきたてるやんちゃなヒーローぶりが、自己投影できる主人公として小学校高学年から中学校の男の子にはアピールすることだろう。
子供向けだが、じつは大人が読んでも楽しい娯楽ファンタジーだ。私もすっかり虜になって、三部作を2日で読了してしまったほどだ。
二部と三部は、ファンタジーというよりもは、ヒーローの活躍を楽しむ戦国物語という感じだ。
予定調和的なところはあるが、それでも面白いことは間違いない。