南北戦争後のテキサスを舞台にした老人と少女の物語 News of the World

著者:Paulette Jiles
出版社: William Morrow
ペーパーバック:240ページ
ISBN-10: 0062573896
発売日: 2016/10/04
難易度:上級(文章は短くて、シンプル)
適正年齢:PG12(Whoreとか少女の人身売買の話題は出てくるが、露骨な描写はない)
ジャンル:歴史小説
キーワード:1870年、南北戦争、西部開拓時代、テキサス、憲法修正第15条、黒人の選挙権、インディアン(アメリカ先住民)、カイオワ(Kiowa)部族
文芸賞:2016年全米図書賞最終候補

1865年に北部の勝利で終わった南北戦争の結果を受け、1870年の憲法修正第15条で黒人にも選挙権が与えられた(皮肉なことに、女性が選挙権を得たのはもっと後の1920年だったが)。
西部開拓時代のテキサスは、無法地帯も多く、北部の支持者と南部の支持者の間で、一触即発の不安定な状況にあった。

70歳を越した退役軍人のCaptain Kiddは、地方を回って世界から集めたニュースを読む仕事をしている。新聞がなかなか入手できない開拓地の住民にとって、Capt. Kiddが選んで読むニュースは、情報を得るだけでなく、稀なエンターテインメントでもあった。

ニュース読みで訪問していた地域で、Kiddはインディアンのカイオワ部族から救出された白人の少女を親族のもとに連れて行く役割を頼まれた。ドイツからの移民だった両親はインディアンの襲撃で殺害され、当時6歳だったJohannaだけが殺されずに誘拐されたのだった。カイオワ部族に4年育てられたJohannaは、すっかりインディアンになりきっていて、ドイツ語も英語も話せない。そして、インディアンの家族から捨てられたということも理解せず、唯一知っている親の元に戻りたいと願う。

意思疎通ができず、インディアンのしきたりのまま行動する10歳の少女を持て余しながらも、Kiddは静かに困難に対応していく。そして、いつしか老人と少女の間に、奇妙な友情が芽生える。しかし、人格者であるがゆえに、Kiddは困難な選択を強いられることになる……。

News of the Worldのストーリーはシンプルだし、ページ数も少ない。
そんな作品が全米図書賞の最終候補になったことを驚くかもしれない。
しかし、読んでいくうちに、シンプルに見えるストーリーと文章の巧妙さに気付き、感心する。

宗教や思想には影響されず、自分の倫理を静かに貫くCapt. Kiddのクールさと、ワイルドに見えて鋭利なJohannaが育て上げていく戦友のような信頼関係が魅力的に綴られていて、長く余韻が残る作品だ。

作者は、この小説を書くにあたって、当時の文献を詳しく調査したらしい。特に、インディアンの部族にさらわれた子どもたちについての報告が興味深い。インディアンと暮らした白人の子どもたちは、たとえそれが1年未満であっても、その後決して白人の風習に溶け込むことができず、自分をさらった部族のところに戻ろうとしたというのだ。Johannaの心理や行動は、決して作り物ではない。

また、ニュースを集めて読むことが仕事になった時代が、Capt. Kiddのキャリアとともに、終わろうとしていることにも、寂しさを感じた。
ソーシャルメディアの普及で、主要メディアよりも偽ニュースが活躍している現在も、いつかノスタルジックに綴られる日がくるのだろうか。

南北戦争後のテキサスを舞台にした老人と少女の物語 News of the World” への1件のフィードバック

追加

  1. トム・ハンクス主演で映画化2020年12月公開予定というので検索していて辿り着きました。大変参考になりました。ありがとうございます。日本語訳も出ると良いですね。

    いいね: 1人

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