12歳で体験した集団レイプと、その後遺症としての肥満。『Bad Feminist』の著者が語る率直な苦闘 Hunger

作者:Roxane Gay
ハードカバー: 320ページ
出版社: Harper
ISBN-10: 0062362593
発売日: 2017/6/13
適正年齢:PG15(集団レイプのトピックあり)
難易度:中級+
ジャンル:回想録/エッセイ
キーワード:レイプ、性暴力、肥満、自己嫌悪、バイセクシュアル、gang rape, self-loathing、morbidly obese、obesity


著者のロクサーヌ・ゲイ(Roxane Gay)は、典型的な「フェミニスト」に当てはまらない、矛盾したフェミニストである自分などについて書いたエッセイ集『Bad Feminist』がベストセラーになって一躍有名人になった。しかし、ネットでは『Bad Feminist』が売れる前から活躍しており、フォロワーが多い有名人だった。

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HubSpot社のINBOUND17でのミシェル・オバマ元大統領婦人とロクサーヌ・ゲイ

私はBad Feministは読んでいないのだが、今年ミシェル・オバマ大統領の談話を聞きに行ったとき、ゲイが質問役をしていたことから興味を抱いた。

ゲイの『Hunger』で最も重要なのは、12歳のときに受けた集団レイプと、それが彼女の人生に与えた大きなインパクトだ。

ゲイは、12歳のときに、好きだった同級生の少年から森におびき出され、そこで彼と彼の友だち数人からレイプされた。ハイチ出身の裕福な中流家庭で、「カトリックの良い女の子」として育ったゲイは、加害者の少年よりも自分を責め、自己嫌悪を抱くようになった。

自分の体に対するゲイの拒絶反応は、親元を離れて由緒ある寄宿生私立学校に入学してから、肥満という形で現れた。その心理は、「侵入不可能な、要塞だと感じる必要があった(I needed to feel like a fortress, impermeable)」だ。その潜在的な欲求にかられ、Gayはアメリカ独自の高カロリー、高脂質のインスタントフードを食べ続けた。突然体重が増えた娘を両親は案じていろいろな対策を取るが、いったん痩せても、すぐにリバウンドした。

最も太っていたときのゲイの体重は577ポンド(約260kg)だという。身長も6フィート3インチ(約190cm)なので、アメリカ人男性とくらべても相当大きいほうだ。43歳の現在は、それより軽くなっているようだが、それでもGayと食べ物、体重との戦いは解決していない。

ネットでゲイの子供時代の写真を見たが、レイプされる前のゲイは、痩せっぽちで、可愛い女の子だった。その少女を見ると、「あのまま大きくなっていたのなら。。。」と涙が出て来る。

幼いときや若いときに受けた性暴力は被害者の心を深く傷つける。

「自分を忌み嫌うのは、呼吸するほど自然なことになった。あの少年たちは、私をクズ同然として扱った。だから私もクズ同然になった
(Hating myself became as natural as breathing. Those boys treated me like nothing so I became nothing.)

自分の体を自分の心から引き離そうとし、自暴自棄になるのは、多くの被害者が体験していることだ。

ゲイの場合は肥満だったが、拒食症や自傷行為に傾く者もいる。また、精神的な苦痛を和らげるためにドラッグやアルコールに頼り、依存症になる者も。ゲイにとってカロリーが高い食品を大量に食べ続けるのは、依存症の一部だったのだろう。

若年の性暴力の被害者がこれまでにも語ってきたことだが、残酷な体験のおかげで、健全な性行動や人間関係が持てなくなってしまう。

ゲイが、20〜30代に性的な関係を持ったのは、無視、軽蔑、暴力を振うような相手ばかりだった。そういう相手ばかりを引き寄せた。

「(それらの虐待)すべてを受け入れたのは、傷ものにされ、その後でも自分の体を破壊し続けてきた自分には、それよりましな扱いを受ける価値がないと知っていたから」
(I was a lightning rod for indifference, disdain, and outright aggression, and I tolerated all this because I knew I didn’t deserve any better, not after how I had been ruined and not after how I continued to ruin my body.”)

もっとも悲しくなったのが、30年経った今でも、ゲイが加害者に自分を傷つけるパワーを与え続けていることだ。

ゲイは、何年も経ってから加害者をネットで探し出し、無言電話をかけた。そして、加害者についてあれこれと考える。

「彼がスタートしたことを私が何年も止められないでいたのを、知っているのだろうか? セックスしているとき、彼のことを考えなければ、何も感じないということを知っているのだろうか? 彼のことを考えなければ、ただ流れにそっているだけ…」(一部略。下記の英語ではそのまま引用)

(I wonder if he knows I have sought out men who would do to me what he did or that they often found me because they knew I was looking. I wonder if he knows how I found them and how I pushed away every good thing. Does he know that for years I could not stop what he started? I wonder what he would think if he knew that unless I thought of him I felt nothing at all while having sex, I went through the motions, I was very convincing, and that when I did think of him the pleasure was so intense it was breathtaking.)

性暴力の被害者は、このように歪(いびつ)になった心の傷からなかなか立ち直れない。ゲイのこの告白は、きっと多くの被害者が感じていることだろう。

でも、加害者にパワーを与えてほしくなかった。それが、私の本音でもある。

ゲイは、社会の肥満差別についても書いている。
だが、残念ながら、この部分の説得力は弱い。

なぜなら、ゲイ自身が、自分の体を受け入れていないからだ。
肥満であるためにほかの人と同じ速さで歩くことができず、階段を昇ることができないことをゲイ自身が認めている。アームレストがある椅子に座ると、圧迫されて痣ができることも。

それに気づかない周囲へのいらだちを表現しつつ、ふつうの生活ができないレベルの病的な肥満をふつうの人と同じように扱わない社会に対する反感を語るというのは矛盾しているのではないだろうか? 読んでいて、彼女が周囲に何をしてほしいのか、ちっともわからなかった。

彼女はまだ、言い訳を続けている。その正直さは評価するべきなのだろうが、同じように苦しんでいる人を励ましてくれる本ではない。

また、「編集しなかったのだろうか?」と首を傾げるほど反復が多い。「それはもう聞きました」と言いたくなるくらいだった。ちゃんと編集したら、この3分の1以下になったはずだ。
ゆえに、アメリカの多くの読者のように星5つをあげることはできない。

とはいえ、この本は、30年前に受けた性暴力のせいで、頭脳明晰な女性の人生がこれだけ変わってしまったのだということ、そして、その影響は決して消えないのだということを、生々しく教えてくれる

そこに、本書の本当の価値があるのかもしれない。

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