記憶喪失の男が失った過去とは? ミステリとキャラで読ませる人間ドラマ I Found You

作者:Lisa Jewell
ペーパーバック: 448ページ
出版社: Arrow
言語: 英語
ISBN-13: 978-0099599524
発売日: 2017/3/9
適正年齢:PG13+(大人向けであり、性とドラッグの話題はあるが、露骨な描写はない)
難易度:上級(だが、読みやすい内容)
ジャンル:chick-lit/スリラー
キーワード:記憶喪失、サイコパス、過去の悲劇、行方不明、嘘
類似作家:Liane Moriarty, Paula Hawkins

イギリス、ヨークシャーの海辺の町に住むシングルマザーのアリスは、あるとき自宅裏にあるビーチに座りこんでいる40歳前後の男をみつけた。アリスは、親友や子供たちの反対を無視し、記憶を失った男を自宅に招き、離れの小屋に住まわせて世話を焼く。

時を同じくして、20歳も年上のイギリス人男性と出会って結婚したウクライナ人の新妻リリーは、ロンドン郊外のアパートで職場から戻らない夫のことを案じていた。若い妻を溺愛していたはずの夫が姿を消した後、彼が持っていたパスポートが偽物だと判明した。警察によると、リリーの夫は実存しないことになる。夫がなんらかの事件に巻き込まれたと信じるリリーは、単独で彼を探し始める。

23年前の1993年の夏。ティーン・エイジャーのグレイとカースティの兄妹は、両親と一緒にヨークシャーの海辺の町に家族旅行に来ていた。ふだんの年と変わらないのんびりしたバケーションだったが、19歳の若者が15歳の妹カースティに異様な熱情を抱くようになり、グレイは不安を覚えるようになる。グレイは「ほとんど大人の19歳が、まだ子供の15歳に恋愛感情をいだくのはおかしい」と両親に訴えるが、深刻にとらえてもらえない。

記憶喪失や3つの異なる物語の謎が同時進行しながら最後に結びつく構成などは」、スリラーやミステリでは特に目新しい手法ではない。だが、「母親失格」すれすれのシングルマザーのアリスや、過去がない男フランク、パーソナルスキルがほとんどないタフなリリー、暗い運命に向かっていく3人の若者……といった登場人物たちがよく描かれていて、彼らの動向から目が離せなくなる。ミステリやスリラーに慣れている人は、途中で何が起こったのか想像できると思うが、それ以外の人は数多い目くらましと何度も起こるどんでん返しで、最後までハラハラを楽しむことができるだろう。

Lisa Jewellは、chick lit(女性小説)として作家のキャリアをスタートしたらしいが、そこで培ったテクニックがかえってミステリ/スリラー分野に活きていると感じる。

英国ではすでにけっこう有名作家のようだが、アメリカでもLian Moriartyのように大ブレイクしそうな予感がする。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 多くの職を体験し、東京で外資系医療用装具会社勤務後、香港を経て1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 100 reviewer.

記憶喪失の男が失った過去とは? ミステリとキャラで読ませる人間ドラマ I Found You」への2件のフィードバック

  1. 謎が気になってどんどん読めるページターナーでした。と言っておいて何ですが、Lisa Jewell の小説を3冊読んでみて、彼女の作品は私には向いていないかもしれないと思っています。読んでいる間はいいのですが、読んだ後「なんだかなぁ・・・」という気分になってしまうので。

    この小説では、リリーと私自身の状況が少し似ていることもあって、感情移入はできるのですが、「そもそもイギリスに入国するための結婚ビザは取れたのか」とか「この後イギリスで生活を続けると不法滞在になるのではないか」とか、現実的なことが気になってしまいました(笑)。

    いいね: 1人

  2. Sparkyさん、

    まさにそのとおりです!(リリーのことも含めて)
    私もJewellの作品をいくつか立て続けに読んで、「なんだかなあ。。。」という気持ちになってしまい、ちょっと遠ざかってますw
    彼女は、読者をひきつけるテクニックがうまいのですが、人間理解という点ではちょっと浅いかなあ。。。と。そのあたり、英国のchick litもそうですよね。私が英国のchick litがイマイチ苦手なことと共通しているように思えます。
    ミステリはけっこういいんですけれどね。

    いいね

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