強くて脆弱なヒロインが葛藤するドラゴンものYAファンタジー三部作 The Last Namsara

作者:Kristen Ciccarelli (デビュー作家)
ハードカバー: 432ページ
出版社: HarperTeen
ISBN-10: 0062567985
発売日: 2017/10/3
適正年齢:PG15
難易度:中級上から上級(文法的にはシンプルだが単語でつまづくかもしれない)
ジャンル:YAファンタジー
キーワード:ドラゴン、王国、女性戦士、裏切り、愛、神話、ロマンス

王国に伝わる古代の神話には、NamsaraとIskariという兄妹がいた。兄のNamsaraは愛と笑いをもたらす陽と精霊の申し子で、妹のIskariは血と月光から生まれ、死をもたらす暗い存在だった。

Firgaard王国の王女Ashaは、Iskariのように死をもたらす存在だとみなされていた。幼い頃に犯した罪のつぐないとして、ドラゴンを倒す戦士として生きてきたAshaは、父の命令で冷酷な軍隊の指揮官と結婚することになっていた。これもまた、罪のつぐないのためだった。

Ashaが犯した罪は、忘れられた物語をドラゴンに語ったことだった。ドラゴンにとって物語は麻薬のような魅力を持つ。Ashaが物語を語ると、ドラゴンはそれにおびき寄せられる。そして、与えることを拒むと、怒って破壊行動に出るのだ。Ashaが幼いとき、ドラゴンにより多くの国民が命を失う惨事が起こったが、それは彼女のせいだった。

父と国への忠誠心だけで生きてきたAshaだが、婚約者の奴隷や奴隷の血が混じる従妹との関わりのなかで、信じていた者からの深い裏切りを知る……。

近年のYAファンタジーは、「中世ヨーロッパ」とそれに類似した典型的な舞台を離れ、中東やアジア大陸に場を移している。サブジャンルでも、かつて流行したパラノーマルものは避けられ、神話や伝説をテーマにしたものがリクルートされている。

The Last Namsaraも現在流行りのエキゾチックな舞台の神話ものである。

YAファンタジーのファンが求める「肉体的には強いが、心理的に脆弱なところがあるヒロイン」や「禁じられた恋」が含まれている。そのうえで、過去の類似品にならないだけの要素も持っている。

パターン的には残念ながら「ファンタジー」のジャンルほどのユニークさはないのだが、400ページを超える長さを読ませる力量はある。三部作なので、一気に読み切りたい人は、2年ほど待ってから読み始めたほうがいいだろう。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 多くの職を体験し、東京で外資系医療用装具会社勤務後、香港を経て1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 100 reviewer.

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中