自閉症スペクトラムの女性が自閉症スペクトラムのヒロインを描いたロマンス本 – The Kiss Quotient

著者:Helen Hoang
ペーパーバック: 336ページ
出版社: Berkley
ISBN-10: 0451490800
発売日: 2018/6/5
適正年齢:R+(成人向け/ニューアダルト:YAとエロチカの中間レベルのセックスシーンが多いロマンス本)
難易度:中級+〜上級
ジャンル:ロマンス/ニューアダルト(NA)
キーワード:自閉症スペクトラム、アスペルガー、エスコートサービス、恋、失恋

マーケティングのアルゴリズムの天才としてシリコンバレーで高級の職を持つステラは30歳独身で恋人なし。孫が早くほしい母親は結婚をせかすが、紹介デートをしても2回めにこぎつけることはできない。
その原因は、自分がアスペルガー(自閉症スペクトラム)で、相手と普通のコミュニケーションが取れないからだとステラは思っている。

ハンサムだが傲慢な同僚のフィリップから「セックスが下手くそだから恋人がいないのだろう。練習すればうまくなる」といったセクハラ的な揶揄をされたステラは、それをアスペルガー的に真に受け、練習のためにエスコートサービスを雇うことに決める。

ステラが雇ったのは、ベトナム人とスウェーデン人の混血のマイケルだった。初期のリピーターからストーカー被害にあったマイケルは、「クライアントは1度きり」というルールを持っていたが、無防備すぎるステラを放っておけなくて継続的に会うようになった。

辛抱強いマイケルと対応しているうちに「セックス以前に自分に欠けているスキルは、付き合う方法だ」と悟ったステラは、「付き合い方の練習」のためだけに1ヶ月マイケルを雇いたいと提案する。

偶然のきっかけからステラはマイケルのベトナム人家族と交流するようになり、マイケルがエスコートサービスをしている理由を推察する。ステラとマイケルの「プロフェッショナルな契約関係」はパーソナルになっていくが、どちらにも障壁を超えられない理由があった……。

主人公がアスペルガー(自閉症スペクトラム)の小説はこれまでにも出版されてきたが、『Kiss Quotient(キス指数)』のように作家自身が自閉症スペクトラムというケースは少ない。なぜなら、アスペルガーの者には、相手の考えていることや、「空気」を読むことができないからだ。小説では、空気を読めない主人公がおかす失敗を客観的に描かなければならないのだが、理解できないことを書くことはできない。そこが、作者のHelen Hoangが最も苦労したところらしい。だが、作者は、主人公のステラのように問題点を絞り込み、多くの人に取材し、文芸エージェントの指導を取り入れる努力を重ねたという。

マイケルのベトナム人の祖母や母、妹は、Hoang自身の家族をモデルにしているという。アスペルガーの女性のリアルな恋の悩みだけでなく、ベトナム系アメリカ人の生活を「ふつうのアメリカの一部」として描いたところも、このロマンス本のスペシャルなところだ。

ステラのアスペルガーらしい混乱や徹底した執着心、方向性の間違った努力に、何度も吹き出しそうになる。それを理解して対応するマイケルや彼の従兄のキャラクターにもほのぼのとする。

6月5日に発売されたばかりだが、発売される前から話題になっており、読者の反応も「キュートで心あたたまる」と評判が良い。

ただし、露骨な性的描写が多いので、そういう本が苦手な人にはおすすめできない。このテーマなのでセックスシーンは必然だけれど、スパイスと同様で、材料(ストーリー)とのバランスが重要じゃないかと思うのだ。「ニューアダルト」のジャンルなので出版社からの指導が入ったかもしれないが、かえって読者層を狭めた気がして残念だ。

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